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相続人の1人が行方不明のときは、まず戸籍の附票で最後の住所を調べ、その住所に手紙を出します。住所が分かっても連絡がつかない、住所自体が分からない、というときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。選ばれた管理人は、家庭裁判所の権限外行為許可を得たうえで、不在者に代わって遺産分割をすることができます(裁判所の手続案内)。生死が7年間明らかでないときは、失踪宣告の申立てもできます(民法第30条)。宣告を受けると、7年の期間が満了した時に死亡したものとみなされます(第31条)。相続登記は、遺産分割が終わっていなくても、自分だけで「相続人申告登記」を申し出れば、自分の義務は果たせます(法務省Q&A)。この記事は、条文と裁判所・法務省の原文で確かめた手続きの整理で、個別の事案の結論ではありません。
順番は次のとおりです。上から順に試し、届かなければ次へ進みます。
行方不明の相続人がいるときの進め方
| 順番 | すること | 根拠・窓口 |
|---|---|---|
| 1 | 戸籍の附票で、最後の住所を調べる | 住民基本台帳法第17条・第20条。行方不明の相続人の本籍地の市区町村 |
| 2 | 分かった住所に手紙を出し、返事を待つ | 連絡がつけば、その人も加えて遺産分割協議(民法第907条第1項) |
| 3 | 連絡がつかない・住所が分からないとき、不在者財産管理人の選任を申し立てる | 民法第25条、家事事件手続法第145条。不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所 |
| 4 | 選ばれた管理人が、権限外行為許可を得て、遺産分割協議に加わる | 民法第28条。裁判所の手続案内 |
| 5 | 生死が7年間明らかでないときは、失踪宣告を申し立てる方法もある | 民法第30条・第31条、家事事件手続法第148条 |
| 6 | 協議の結果に基づいて相続登記をする。急ぐときは、自分だけで相続人申告登記を申し出る | 法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A |
どの手続きを使うかは、行方不明の期間、生死が分かるかどうか、遺産の内容で変わります。このサイトでは個別の事案の判断はできません。
自分に近い行から見てください。
状況ごとの、先に確かめること
| あなたの状況 | 先に確かめること | 次に読むところ |
|---|---|---|
| 相続人の1人の住所が分からない | 行方不明の人の本籍地の市区町村に、戸籍の附票の写しを請求する。附票には住所と、住所を定めた年月日が記載される(住民基本台帳法第17条) | 本記事「住所はどう調べますか」 |
| 手紙を出したが、宛先不明で戻ってきた | 附票の住所に実際に住んでいるとは限らない。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法がある(民法第25条) | 本記事「不在者財産管理人とは」 |
| 何年も音信不通で、生きているかも分からない | 生死が7年間明らかでないときは、失踪宣告を申し立てられる(民法第30条第1項) | 本記事「失踪宣告とは」 |
| 数年前に家を出た。生きている可能性が高い | 生死が明らかでない期間が7年に満たないときは、失踪宣告ではなく、不在者財産管理人の選任を考える | 本記事「不在者財産管理人とは」 |
| 海外にいるかもしれない | 附票には、国外に転出した旨の届出をした人は「国外転出者である旨」が記載される(住民基本台帳法第17条第3号)。海外の相続人との進め方は別の記事にまとめた | 海外在住の相続人がいる場合の相続手続き |
| 相続登記の3年の期限が近い | 遺産分割が終わらなくても、自分だけで相続人申告登記を申し出れば、自分の義務は履行されたとみなされる | 本記事「遺産分割と相続登記」、相続登記の3年の期限 |
手がかりは戸籍の附票です。戸籍の附票には、戸籍に記載されている人の住所と、住所を定めた年月日が記載されます(住民基本台帳法第17条)。附票は、本籍地の市区町村が備えています。
誰が請求できるかは、条文で分かれます(第20条)。
戸籍の附票の写しを請求できる人
| 請求する人 | 条文の定め | 根拠 |
|---|---|---|
| 附票に記録されている本人、その配偶者・直系尊属・直系卑属 | 請求できる | 住民基本台帳法第20条第1項 |
| 上記以外で、自己の権利を行使するために記載事項を確認する必要がある人(行方不明の兄弟の住所を調べたい相続人など) | 市町村長が申出を相当と認めるときに交付できる(住所などの記載事項のみが表示された写し) | 同条第3項第1号 |
| 弁護士・司法書士など、受任している事件の依頼者が上の第3項に当たる場合 | 市町村長が申出を相当と認めるときに交付できる | 同条第4項 |
申出の理由や必要書類は市区町村ごとに案内が違います。窓口や郵送の方法は、本籍地の市区町村に確かめてください。
行方不明の人の本籍が分からないときは、亡くなった人の戸籍(出生から死亡まで)をたどって、その人が記載された戸籍を探します。戸籍の集め方は戸籍の広域交付とは、必要書類の全体は遺産分割協議書の書き方に載せています。戸籍謄本そのものの請求は、戸籍法第10条の2が、自己の権利を行使するために必要な場合などの請求を定めています。
住所が分かったら、その住所に手紙を出します。亡くなった事実、相手が相続人であること、遺産分割の協議をしたいことを、事実のまま書きます。返事がなければ、一定の期間を置いて、もう一度出します。戻ってきたときは、その記録を取っておきます。家庭裁判所に申し立てるときの「不在の事実を証する資料」になります。
民法第25条第1項は、従来の住所または居所を去った者(不在者)が財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができると定めています。裁判所は、この制度を次のように案内しています。
不在者財産管理人の選任の申立て(裁判所の手続案内)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立てに必要な費用 | 収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手。不在者の財産の内容から、管理に必要な費用(管理人への報酬を含む)に不足が出る可能性があるときは、申立人が予納金を納めることがある |
| 標準的な添付書類 | 不在者の戸籍謄本、不在者の戸籍附票、財産管理人候補者の住民票または戸籍附票、不在の事実を証する資料、不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金の残高が分かる書類など)、利害関係を証する資料(戸籍謄本など) |
| 権限外行為許可の申立て | 遺産分割協議のように、民法第103条の権限(保存行為と、物や権利の性質を変えない範囲の利用・改良)を超える行為をするときに必要。申立人は不在者財産管理人、申立先は管理人を選任した家庭裁判所、収入印紙800円分 |
予納金の額は、事案ごとに家庭裁判所が決めます。申立先の裁判所に確かめてください。
管理人は、管理する財産の目録を作らなければならず、その費用は不在者の財産から出ます(民法第27条第1項)。家庭裁判所は、不在者の財産の中から、管理人に相当な報酬を与えることができます(第29条第2項)。権限外の行為は、家庭裁判所の許可を得てすることができます(第28条)。裁判所は、この制度は不在者自身や、不在者の財産について利害関係を持つ第三者の利益を保護するためのものと説明しています。遺産分割の内容を許可するかどうかは、家庭裁判所が判断します。
不在者が財産を管理できるようになったときなど、管理を続けることが相当でなくなったときは、家庭裁判所は、選任を取り消すことができます(家事事件手続法第147条)。
失踪宣告は、生死不明の人を法律上、死亡したものとみなす制度です(裁判所の手続案内)。
失踪宣告の2つの型
| 型 | 要件 | 死亡とみなされる時 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 普通失踪 | 不在者の生死が7年間明らかでないとき | 7年の期間が満了した時 | 民法第30条第1項・第31条 |
| 危難失踪 | 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中にいた者など、死亡の原因となる危難に遭った者の生死が、危難が去った後1年間明らかでないとき | 危難が去った時 | 民法第30条第2項・第31条 |
相続との関係:行方不明の人が相続人の1人で、失踪宣告を受けると、その人は死亡したものとみなされます。みなされる時が、亡くなった人の死亡より前なら、その人の子が代襲して相続人になる場合があります(民法第887条第2項)。みなされる時の前後や、子がいるかどうかで結論が変わるため、弁護士に確かめてください。
使い分けの目安は、生死が分かるかどうかです。生きている前提で、その人の財産を管理しつつ遺産分割を進めるのが不在者財産管理人、死亡したものとして扱うのが失踪宣告です。生死が不明の期間が7年に満たないときは、失踪宣告は使えません。音信不通なだけで、生死不明といえるかは、事案で家庭裁判所が判断します。
遺産分割は、共同相続人の協議で行います(民法第907条第1項)。行方不明の相続人がいるときは、上の不在者財産管理人を選任し、管理人が権限外行為許可を得て、協議に加わります。協議がまとまったら遺産分割協議書を作り、協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方にあります。
相続登記について、法務省のQ&Aには次のように書かれています。
一般に「正当な理由」があるとされる事情の例は、法務省のQ&Aに5つ挙げられています(相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間がかかる場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合など)。行方不明の相続人がいる場合は、これらの例には書かれていませんが、例に当たらない場合も、個別の事情で判断されると書かれています。期限の考え方は相続登記の3年の期限にあります。
不在者財産管理人の選任と権限外行為許可は、家庭裁判所への申立てです。申立書の書式と記載例は、裁判所のサイトにあります。自分で申し立てることもできますが、添付書類(戸籍・附票・財産の資料)が多く、戸籍の附票の請求も本人以外では理由の説明が要るため、次の頼み先があります。
手続きを頼める専門家
| 頼み先 | 頼めること | 根拠 |
|---|---|---|
| 弁護士 | 家庭裁判所への申立て、不在者財産管理人との協議、行方不明の相続人の住所調査、調停・審判の代理 | 弁護士法第3条 |
| 司法書士 | 家庭裁判所に提出する書類の作成、相続登記の申請の代理 | 司法書士法第3条 |
弁護士費用の目安は相続の弁護士費用の相場にあります。
協議がまとまらないときは、遺産分割調停の申立てもできます(民法第907条第2項)。兄弟の間で話が進まないときの順番は兄弟で相続が揉めたらにあります。
行方不明の相続人がいる遺産分割は、申立て先、必要書類、遺産分割の許可の見通しが絡み、法律の専門家に相談する場面です。相談先の探し方は、費用が心配かどうかで分かれます。
相談の前に、次を手元に出しておくと話が早く進みます(筆者の整理)。
遺産分割は共同相続人の協議で行います(民法第907条第1項)。行方不明の相続人がいるときは、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人が権限外行為許可を得て、不在者に代わって協議に加わる方法が、裁判所の手続案内に書かれています。
戸籍の附票で調べます。附票には住所と、住所を定めた年月日が記載されます(住民基本台帳法第17条)。本人・配偶者・直系尊属・直系卑属以外が請求するときは、自己の権利を行使するために必要であることなどを申し出て、市町村長が相当と認めたときに交付されます(第20条第3項)。
裁判所の手続案内では、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手です。管理に必要な費用(管理人への報酬を含む)に不足が出る可能性があるときは、予納金を納めることがあります。予納金の額は、家庭裁判所が事案ごとに決めます。
生死が7年間明らかでないときです(民法第30条第1項)。戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中にいた者など、死亡の原因となる危難に遭った者は、危難が去った後1年間です(第2項)。申立人は利害関係人で、申立先は不在者の従来の住所地または居所地の家庭裁判所です。
失踪者が生存することなどの証明があれば、家庭裁判所は、本人または利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければなりません。宣告によって財産を得た人は、現に利益を受けている限度で財産を返還します(民法第32条)。
期限の定めは同じです。遺産分割が調わないときは、自分だけで相続人申告登記を申し出れば、自分の義務は履行されたとみなされます(法務省Q&A)。ただし、相続人申告登記は、申出をした相続人についてだけ義務を履行したとみなす制度です。
遺産の総額がいくらで、相続税がかかるかは、先に計算機で確かめられます
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