子どもや兄弟が海外に住んでいる場合、相続手続きは通常より複雑になります。 印鑑証明書の代替書類・大使館での手続き・外国語書類の取り扱いなど、 国内だけの相続とは異なるポイントが多数あります。 早めに対応しないと申告期限に間に合わない恐れもあります。
相続人の一人が海外に住んでいると、以下の点で通常より手続きが複雑になります。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
日本国内では遺産分割協議書に実印+印鑑証明書が必要ですが、 海外在住者には「印鑑証明書」に代わる書類として以下が認められます。
在外公館(大使館・領事館)で発行してもらえる証明書です。 「この署名は確かに日本人○○のものである」と領事が証明します。 遺産分割協議書に署名したもの(またはサインの見本)に対して証明を取り付けます。
現地の公証人(Notary Public)による署名証明を利用する方法もあります。 ただし金融機関・法務局がどちらの方式を受け付けるかは事前に確認が必要です。
「ハーグ条約」の加盟国間では、外国の公文書に「アポスティーユ」という認証を付すことで、 その国の公的書類であることを証明できます。 日本へ提出する外国語書類にアポスティーユが付いていれば、領事認証の代わりになります。
書類の証明方法の比較
| 方法 | 取得先 | 特徴 |
|---|---|---|
| サイン証明 | 在外公館 | 最も確実。日本の手続きで広く認められる |
| ノータリゼーション | 現地公証人 | 在外公館が遠い場合に便利 |
| アポスティーユ | 現地政府機関 | ハーグ条約加盟国の公文書に使える |
在外公館では、相続に関連して以下の手続きを行えます。
在外公館での手続きは予約制のことが多く、混雑する公館(アメリカ・ヨーロッパ主要都市)では 予約まで数週間待つことも珍しくありません。 必要な手続きがわかったら早めに予約を取ることをお勧めします。
現地政府発行の書類(出生証明・婚姻証明・残高証明など)が外国語の場合、 日本語の翻訳文を添付する必要があります。
翻訳文には「私は上記書類を正確に翻訳したことを証明します」という 翻訳者の署名・連絡先が記載されていることが一般的です (金融機関・法務局によって要求水準が異なります)。
相続人が海外に居住していても、被相続人が日本国内に住んでいた場合は、 日本国内の財産について日本で相続税を申告・納税する義務があります。
申告書は被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に提出します。 海外在住の相続人は直接窓口に持参することが難しいため、 日本国内に住む他の相続人や税理士に手続きを委任することが一般的です。
被相続人が海外に資産を持っていた場合(外国の銀行口座・不動産・株式)、 それらも日本の相続税の課税対象となります(国内居住者の場合)。
海外不動産は「外国の財産評価の基準」(売買実例・固定資産評価証明など)に従って評価し、 相続開始日の為替レートで円換算します。
外国の銀行口座の残高は、相続開始日時点の残高を死亡日の為替レートで円換算します。 各口座の残高証明書を現地銀行から取り寄せ(通常2〜4週間かかる)、翻訳して申告書に添付します。
海外在住相続人がいる場合の手続きスケジュール例
| 時期 | やること |
|---|---|
| 死亡後すぐ | 海外在住の相続人に連絡・在外公館予約を入れる |
| 1〜2か月 | 在外公館でサイン証明を取得・戸籍謄本を日本で取り寄せ |
| 2〜4か月 | 遺産分割協議書の作成・全員の署名・証明書取得 |
| 5〜8か月 | 相続税申告書の作成・金融機関手続き |
| 10か月以内 | 相続税申告・納税(期限厳守) |
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