相続手続きの第一歩は財産の全容を把握することです。 財産目録を作成することで、相続放棄の判断・相続税申告・遺産分割協議の根拠となる正確な財産リストが揃います。 預貯金・不動産・有価証券の調査方法と、ゴルフ会員権・仮想通貨など見落としやすい財産のチェックリストを解説します。
相続が発生すると、まず「プラスの財産とマイナスの財産(債務)の総額」を把握する必要があります。 財産目録はその一覧表であり、以下の3つの場面で必須の基礎資料になります。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
まず遺品(通帳・カード・郵便物)から取引のある銀行を特定します。 通帳が見つからない銀行があっても、金融機関本店や所轄の国税局に照会できる「残高証明書」の 取得手続きがあります。
取引履歴の開示請求も可能です。生前に不自然な引き出しがないか確認すると、 名義預金や使途不明金の問題を早期に把握できます。
不動産は以下の3つの書類を組み合わせて全容を把握します。
不動産調査に使う書類
| 書類 | 取得先 | 確認できること |
|---|---|---|
| 固定資産税納税通知書 | 遺品の中に毎年届く | 課税対象の不動産の一覧(市区町村ごと) |
| 名寄帳(なよせちょう) | 市区町村の税務課 | その市区町村内の全不動産を一覧確認できる |
| 登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局・オンライン申請 | 所有権・抵当権・地番・地積・構造など詳細 |
名寄帳は無料または低額で取得でき、複数の物件をまとめて確認できるため便利です。 ただし、他の市区町村に不動産がある場合は別途その市区町村で取得する必要があります。
上場株式や投資信託は証券会社に問い合わせて残高を確認します。 証券会社がわからない場合は、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示制度」を 利用すると保有口座の有無を調べられます。
保険証券が見つからない場合は、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用できます(有料)。 死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の対象になりますが、 「500万円×法定相続人数」の非課税枠があります。
勤務先から支払われる死亡退職金も「みなし相続財産」として相続税の対象です。 死亡後3年以内に支払われたものについては生命保険と同様の非課税枠が適用されます。
以下の財産は存在を忘れやすく、後になって発覚するケースが多いです。 税務調査でも指摘されやすい項目ばかりです。
見落としやすい財産の一覧
| 財産の種類 | 調査方法・注意点 |
|---|---|
| ゴルフ会員権 | 会員証・年会費の領収書を探す。相続税評価額は取引価格の70%が目安 |
| 貸付金・立替金 | 通帳の入出金や契約書で確認。友人・子への貸付けも対象 |
| 著作権・特許権 | 登録番号や印税収入の記録を確認。無形財産として評価が難しい |
| 仮想通貨(暗号資産) | 秘密鍵・ウォレットアプリ・取引所の利用明細を確認。残高証明書は取引所に請求 |
| 未収賃料・未収利息 | 賃貸収入がある場合、死亡時点の未収分も財産に含まれる |
| 海外財産 | 海外口座・海外不動産・外貨建て保険など。日本の相続税の対象になる |
| 電子マネー・ポイント | 一定額以上は財産として申告が必要な場合がある |
相続財産からは債務(借金・未払い費用)を差し引くことができます。 プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も正確に把握することが重要です。