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遺産分割協議を全員の合意でやり直し、一度取得した財産を別の相続人が取得することになると、贈与税や所得税(譲渡所得)が問題になる場合があります。相続税法第9条は、対価を支払わないで利益を受けた場合は贈与により取得したものとみなすと定めています。不動産を持分で入れ替える形になれば、国税庁は交換として扱う場合があると示しています。登記は、原因が相続から外れると、登録免許税が不動産の価額の1,000分の4から、贈与・交換などのその他の原因の1,000分の20になります。一方、錯誤や詐欺で取り消した場合は、契約の取消しなどにあたるなら、事由が生じた日の翌日から2か月以内に更正の請求ができる定めがあります(国税通則法第23条第2項第3号、同法施行令第6条第1項第2号)。この記事では、国税庁・e-Gov・法務局の原文で、申告前・申告後・登記した後・新しい遺産が見つかったときの違いを整理します。国税庁の質疑応答事例などに、成立した遺産分割のやり直しそのものを扱うものは見つからなかったため、個別の課税関係は税務署か税理士に確かめてください。
やり直しで問題になる税金と費用を、場面ごとに並べます。
やり直しの場面と、問題になる税金・費用
| 場面 | 問題になる税金・費用 | 根拠 |
|---|---|---|
| 全員の合意で、取得する人が入れ替わる・増える | 贈与税(対価なしで利益を受けたときは贈与とみなされる)。不動産の持分を入れ替えるときは、所得税の譲渡所得(交換) | 相続税法第9条、国税庁 質疑応答事例「共有物の分割」 |
| 分割のあとで、取得した財産を価額に代えて別の人に渡す | 所得税の譲渡所得(代物弁済) | 国税庁 質疑応答事例「遺産分割後に認知を受けた者に遺産の一部を給付した場合の譲渡所得の課税」 |
| 錯誤・詐欺で取り消した、契約が解除された | 当初の分割に基づく相続税の申告が、多すぎる・少なすぎる状態になる。更正の請求や修正申告 | 国税通則法第23条第2項第3号、同法施行令第6条第1項第2号 |
| 不動産の登記をやり直す | 登録免許税。相続は1,000分の4、贈与・交換などのその他の原因は1,000分の20。更正・抹消は不動産1個につき1,000円 | 登録免許税法別表第一、国税庁 No.7191 |
国税庁の質疑応答事例・タックスアンサーを調べた範囲では、成立した遺産分割のやり直しそのものを扱うものは見つかりませんでした。2行目までの国税庁の資料は、近い場面の事例です。
自分に近い行から見てください。右の列は、そのあとに読む記事です。
状況ごとの、税金と登記で先に確かめること
| あなたの状況 | 先に確かめること | 次に読む記事 |
|---|---|---|
| 相続税の申告の前 | 申告書は申告する時点の分け方で作る。まとまらなければ未分割のまま申告できるが、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例は、原則として申告期限後3年以内の分割が条件(国税庁 No.4208・No.4158) | 未分割のまま申告する方法、未分割申告の税額と分割後の差 |
| 相続税を申告したあと、未分割だった財産を分割した | 知った日の翌日から4か月以内の更正の請求。増える人は修正申告(相続税法第32条第1項第1号) | 更正の請求の書き方、修正申告の計算ツール |
| 申告したあと、成立済みの分割をやり直した | 相続税法第32条第1項に、成立した分割のやり直しは挙がっていない。贈与や譲渡の問題が出るかは、次の節で確かめる | 申告を間違えたとき(修正申告・更正の請求) |
| 錯誤・詐欺で取り消した | 契約の取消しなどにあたるなら、事由が生じた日の翌日から2か月以内に更正の請求(国税通則法第23条第2項第3号)。当たるかどうかは、税務署か税理士に確かめる | 遺産分割協議のやり直しはできるか |
| 相続登記をしたあと | 登記をやり直す場合の登録免許税は、登記の種類で違う(下の「登記」の節)。専門家への相談は司法書士・弁護士へ | 相続登記の必要書類 |
| 自分が取得する不動産を取り直したい | 他の相続人から不動産を取得し直すと、贈与・交換・代物弁済のどれに当たるかが問題になる(次の節の表) | 代償分割とは |
| 協議のあとで、新しい遺産が見つかった | これは、見つかった遺産の追加の分割。申告済みの相続税が少なすぎたときは、修正申告書を出せる(国税庁「相続税の申告のしかた」) | 申告漏れの追徴課税はいくら |
国税庁は、贈与税を、個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金と案内しています(No.4402)。暦年課税では、その年に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除110万円を差し引いた残りにかかり、申告は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。相続税法第9条は、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合に、その利益を受けた時に、利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなすと定めています。
次の表は、国税庁の資料が示す見方です。どれも、成立した遺産分割そのもののやり直しを扱った事例ではありません。分割のあとで財産が動く近い場面です。
国税庁の資料が示す、近い場面の見方
| 場面 | 国税庁の見方 | 出典 |
|---|---|---|
| 遺言書の内容と異なる遺産の分割 | 相続人全員で遺言書と異なる分割をしたときは、受遺者が遺贈を事実上放棄し、共同相続人間で遺産分割が行われたとみる。贈与税は課されない。成立した分割のやり直しを扱ったものではない | No.4176 |
| 遺産分割で共有登記した不動産を、あとで共有物の分割で入れ替える | 一の土地の持分に応じた現物分割ではなく、A不動産の持分とB土地の持分を入れ替える分割は、交換として課税関係が生じる。固定資産の交換の特例(所得税法第58条)の要件を満たせば、その適用がある | 質疑応答事例(譲渡所得)「共有物の分割」 |
| 遺産分割を終えたあとで、価額に代えて取得した土地を別の人に渡す | 遺産分割を了した遺産は相続人の完全な所有物になっており、価額の支払に代えて土地を渡すのは代物弁済で、譲渡所得課税の対象になる。連署の協議書などで、現物分割で取得したと認められる場合は課税しない取扱い | 質疑応答事例(譲渡所得)「遺産分割後に認知を受けた者に遺産の一部を給付した場合の譲渡所得の課税」 |
この表から言えるのは、分割を終えた財産を相続人の間で動かすと、贈与・交換・代物弁済のどれかとして、税金が出る場合があるということです。どれに当たるか、特例が使えるかは、やり直しの理由、当初の協議の内容、動く財産の種類で変わります。分け方を決める前に、税務署か税理士に確かめてください。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日です(国税庁 No.4205)。やり直しが申告の前か後かで、手続きが違います。
相続税の申告の前後と、手続き・期限
| 時期・事由 | 手続き | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 申告期限の前 | 申告書は、申告する時点の分け方で作る。分け方がまとまらなければ、未分割のまま、法定相続分で計算して申告できる | 相続の開始を知った日の翌日から10か月 | 国税庁 No.4205・No.4208 |
| 申告後に、未分割だった財産が分割された | 更正の請求(税額が多すぎる人)、修正申告(少なすぎる人) | 分割を知った日の翌日から4か月以内(更正の請求) | 相続税法第32条第1項第1号、国税庁「相続税の申告のしかた」 |
| 申告後に、成立済みの分割をやり直した | 相続税法第32条第1項(と施行令第8条の政令で定める事由)には、成立した分割のやり直しは挙がっていない。計算の誤りがある場合の更正の請求(法定申告期限から5年以内)が使えるかは、事情で変わる | 5年以内(国税通則法第23条第1項) | 相続税法第32条、同施行令第8条、国税通則法第23条 |
| 申告後に、取消しや契約の解除があった | 契約が解除権の行使などによって解除され、又は取り消されたことは、更正の請求の理由に挙がる。遺産分割協議の取消しがこれに当たるかは、税務署か税理士に確かめる | 事由が生じた日の翌日から2か月以内 | 国税通則法第23条第2項第3号、同法施行令第6条第1項第2号 |
| 申告後に、新しい遺産が見つかった | 少なく申告していたときは、修正申告書を出せる。加算税や延滞税がかかる場合がある | ― | 国税庁「相続税の申告のしかた」 |
国税庁の手続案内(B1-27)は、後発的な理由による更正の請求を「2か月又は4か月以内」と案内しています。どの期限に当たるか迷うときは、税務署に確かめてください。書き方と添付書類は相続税の更正の請求の書き方に、期限の日付と戻る税額の目安は更正の請求の計算ツールにあります。
権利に関する登記には、登記原因とその日付が記録されます(不動産登記法第59条第3号)。登記の申請は、原則として登記権利者と登記義務者が共同でし(第60条)、登記原因を証する情報を添えます(第61条)。相続による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請できます(第63条第2項)。やり直しで他の相続人に権利を移す登記が「相続」を原因にできない場合は、この単独申請の対象にならない場面が出ます。
どの登記(更正・抹消・移転)を、どの原因で申請するかは、やり直しの理由で変わります。法務局は、遺産の分割の方法や協議書の作成についての相談には応じていないため、司法書士・弁護士に相談してください(法務局の登記手続ハンドブック)。
登録免許税の税率(不動産の登記)
| 登記の種類 | 税率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 所有権の移転(相続、法人の合併、共有物の分割) | 不動産の価額の1,000分の4 | 登録免許税法別表第一 第一号(二)イ・ロ、国税庁 No.7191 |
| 所有権の移転(その他の原因=贈与・交換・収用・競売など) | 不動産の価額の1,000分の20 | 同ハ |
| 付記登記、抹消された登記の回復、登記事項の更正・変更の登記 | 不動産の個数1個につき1,000円 | 同(十四) |
| 登記の抹消 | 不動産の個数1個につき1,000円 | 同(十五) |
「不動産の価額」は、固定資産課税台帳に登録された価格があるときは、原則としてその価格です(国税庁 No.7191)。
たとえば、価額1,000万円の不動産なら、相続を原因にした移転は4万円(1,000万円×1,000分の4)、贈与や交換などその他の原因では20万円(1,000万円×1,000分の20)です。このほか、土地は価額100万円以下の相続登記の免税措置などがあります。どの原因の登記になるかは、やり直しの中身で決まります。
登記をやり直す前に分割で取得した不動産を第三者に売ったり担保に入れたりしていた場合は、第三者の権利を害せません(民法第909条)。相続分を超える部分は、登記などの対抗要件を備えなければ第三者に対抗できません(民法第899条の2)。
やり直しの税金と登記は、事情で結論が変わります。相談の前に、次を手元に出しておくと、話が早く進みます。
税金は税理士、登記の申請は司法書士か弁護士に相談します。取り消せるかどうかや、揉めているときの進め方は遺産分割協議のやり直しはできるかにあります。
かかる場合があります。相続税法第9条は、対価を支払わないで利益を受けた場合に、贈与により取得したものとみなすと定めています。国税庁の質疑応答事例・タックスアンサーを調べた範囲では、成立した遺産分割のやり直しそのものを扱うものは見つかりませんでした。やり直しの理由と分け方で変わるため、税務署か税理士に確かめてください。
申告の前なら、申告書は申告する時点の分け方で作ります。申告のあとに、未分割だった財産を分割したときは、更正の請求(4か月以内)や修正申告になります(相続税法第32条第1項第1号)。成立済みの分割をやり直した場合は、第32条第1項に事由が挙がっていないため、事情で扱いが変わります。
錯誤や詐欺で取り消した、契約が解除されたなど、契約の取消しなどにあたるときは、事由が生じた日の翌日から2か月以内に更正の請求ができる定めがあります(国税通則法第23条第2項第3号、同法施行令第6条第1項第2号)。遺産分割協議の取消しがこれに当たるかは、税務署か税理士に確かめてください。
登記の種類と原因で変わります。登録免許税は、相続による所有権の移転が不動産の価額の1,000分の4、贈与・交換などのその他の原因が1,000分の20、更正・抹消は不動産1個につき1,000円です(登録免許税法別表第一、国税庁 No.7191)。申請の進め方は司法書士か弁護士に相談してください。
取り消された行為は、初めから無効だったものとみなされます(民法第121条)。取消しがあったときの課税関係は、国税通則法施行令第6条第1項第2号の「契約が…取り消されたこと」に当たるかなどで変わります。税務署か税理士に確かめてください。
見つかった遺産を分ける協議を、新たにすればよいのが通常で、既存の分割をやり直す必要はありません(民法第907条第1項は、遺産の全部又は一部の分割ができると定めています)。申告済みの相続税が少なすぎたときは、修正申告書を出せます(国税庁「相続税の申告のしかた」)。
更正の請求ができる期限と戻る税額は、計算ツールで確かめられます
更正の請求の期限と戻る税額を計算する →