「実家を売りたくないが、他の兄弟への公平な分け方が難しい」——こうした場面でよく使われるのが代償分割です。 1人が不動産などを引き継ぐ代わりに、他の相続人に現金(代償金)を支払う方法です。 代償金の計算方法・払えない場合の対処・相続税の申告方法まで解説します。
代償分割とは、相続人の1人(または複数人)が遺産の現物(主に不動産)を取得し、 その代わりに他の相続人に対して自己の固有財産から現金などを支払う分割方法です(民法906条の趣旨)。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
代償分割の基本的な流れ(実家を長男が相続する例)
| 遺産 | 実家(評価額3,000万円)+預金300万円 |
| 相続人 | 長男・次男・三男(各法定相続分1/3) |
| 分割内容 | 長男が実家と預金全額を取得。次男・三男それぞれに代償金1,100万円を支払う |
| 長男の実質取得 | 3,300万円 − 2,200万円(代償金)= 1,100万円相当 |
代償分割を行うには相続人全員の合意が必要です。 遺産分割協議書に「長男が実家を取得し、次男・三男それぞれに金1,100万円を支払う」と 明記します。
代償金の計算は「各財産の評価額をもとに、法定相続分(または合意した相続分)で按分する」方法が基本です。
代償金 =(取得した財産の評価額 − 自分の法定相続分の額)
遺産総額3,300万円・法定相続分1/3なら各人1,100万円が基準
代償金の計算に使う不動産の評価額は、相続人間の合意で決めることができます。 一般的には以下のいずれかが使われます。
不動産を取得した相続人に代償金を支払う資金がない場合、以下の対処法が考えられます。
相続人間で合意すれば、代償金を一括ではなく分割して支払うことも可能です。 この場合は遺産分割協議書に支払スケジュールを明記し、 抵当権の設定なども検討します。
金融機関によっては「相続関連ローン」として代償金の資金調達に融資するケースがあります。 ただし審査があり、担保が必要な場合もあります。
代償金の資金がどうしても用意できない場合は、不動産を売却して売却代金を分割する 「換価分割」への切り替えも選択肢です。
代償分割と換価分割の比較
| 項目 | 代償分割 | 換価分割 |
|---|---|---|
| 不動産の扱い | 1人が取得して継続保有 | 売却して現金化 |
| 現金の準備 | 代償金が必要 | 不要(売却後に分配) |
| 居住者がいる場合 | そのまま住み続けられる | 退去が必要 |
| 譲渡所得税 | 発生しない | 売却益がある場合に課税 |
| 公平性 | 評価額の合意が必要 | 売却価格で明確に分割 |
「実家に住んでいる親族がいる」「先祖代々の土地を手放したくない」場合は代償分割が適しています。 一方、相続人全員が遠方に住んでいて不動産を活用できない場合は換価分割が現実的です。
代償分割を行った場合の相続税の計算は通常の方法と同じですが、 申告書への記載に注意が必要です。
なお、代償金を不動産で代替する場合は「代物弁済」となり、 譲渡所得税が課税される可能性があるため注意が必要です。
代償金の額・評価方法について相続人間で合意できない場合は、 家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停では調停委員(専門家)が間に入り、双方の言い分を聞きながら合意形成を促します。 調停でも合意できない場合は遺産分割審判に移行し、裁判官が分割方法を決定します。
代償分割の前に、相続税の総額を把握しておきましょう
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