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前妻の子の相続権を、遺言・生前贈与・生命保険だけでなくすことはできません。法律で相続権をなくせるのは、欠格(民法第891条)、廃除(第892条)、本人の相続放棄(第938条)の3つで、前2つは要件が厳しく、放棄は本人が決めます。遺言で前妻の子以外に全財産を渡す内容にしても、子には遺留分があり、法定相続分の2分の1です(第1042条)。裁判所は、遺留分を、被相続人の生前の贈与や遺贈によっても奪われることのない最低限の取り分と案内しています。遺留分を侵害した遺言は無効になるわけではありませんが、前妻の子が請求すれば、侵害額に相当する金銭を払う義務が生じます(第1046条)。この記事は、条文と裁判所の案内で確かめた整理で、どの立場の方にも同じ内容で書いています。個別の事案の結論ではありません。
渡す額を減らす方法はありますが、遺留分までは減らせません。方法ごとに、できることとできないことを並べます。
方法ごとの、できること・できないこと
| 方法 | できること | できないこと | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 遺言で、他の人に財産を渡す | 共同相続人の相続分を定める。包括または特定の名義で財産を処分する | 前妻の子の遺留分(法定相続分の2分の1)を、なくすことはできない | 民法第902条・第964条・第1042条 |
| 生前に、他の人へ贈与する | 財産を生前に移す | 相続開始前の1年間の贈与は、遺留分の計算に入る(相続人への贈与は、婚姻・養子縁組のためなど一定のものに限り10年間)。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、1年前より前の贈与も入る | 民法第1043条・第1044条 |
| 生命保険の受取人を、他の人にする | 保険契約者は、保険事故が発生するまで、保険金受取人を変更できる | 遺留分の計算で保険金がどう扱われるかは、事案で変わる | 保険法第43条 |
| 推定相続人の廃除を、家庭裁判所に請求する | 虐待・重大な侮辱・著しい非行があるとき、家庭裁判所に請求できる。遺言でも意思を表示できる | 要件に当たるかは家庭裁判所が判断する。疎遠であることだけを要件にする条文はない | 民法第892条・第893条 |
| 前妻の子に、遺留分を放棄してもらう | 前妻の子本人が、家庭裁判所の許可を得て、生前に放棄できる | 放棄するかどうかは、本人が決める | 民法第1049条 |
どの方法が使えるかは、財産の内容、家族の状況、証拠で変わります。このサイトでは個別の事案の判断はできません。
自分に近い行から見てください。
状況ごとの、先に確かめること
| あなたの状況 | 先に確かめること | 次に読むところ |
|---|---|---|
| 現在の家族に多く残したい(遺言を書く側) | 遺言の形式と、前妻の子の遺留分の額を先に確かめる。遺留分に当たる金額を、現金で用意できるかも確かめる | 本記事「遺言で、他の人に渡すとき」、遺言書の書き方 |
| 前妻の子とは、長く会っていない・養育費を払ってきた | 条文は、交流の有無や養育の経過を、相続権や遺留分の要件にしていない。廃除の要件は「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」 | 本記事「相続権を、なくせますか」 |
| 前妻の子で、遺言に「渡さない」と書かれていた | 遺留分侵害額請求ができる場合がある。請求できる期間は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年(民法第1048条) | 遺留分を自分で請求するには |
| 現在の家族で、前妻の子から遺留分を請求されそう | 請求の中身(金額・対象)を確かめる。金銭で払う制度で、不動産そのものを返す制度ではない(民法第1046条) | 遺留分を請求されたら |
| 生命保険の受取人を、現在の家族にしてある | 相続税では、受取人が相続人の場合、500万円×法定相続人の数が非課税になる(国税庁 No.4114)。遺留分の計算での扱いは事案で変わる | 本記事「生前贈与と生命保険は」、生命保険と相続税 |
| 生前に、財産を全部、現在の家族へ贈与しようと考えている | 相続人への贈与は、相続開始前の10年間(婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けたものに限る)が、遺留分の計算に入る(民法第1044条第3項) | 本記事「生前贈与と生命保険は」 |
相続権をなくす方法は、条文に次の3つがあります。
相続権をなくす、3つの方法
| 方法 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 欠格 | 故意に被相続人などを死亡させて刑に処せられた、詐欺・強迫で遺言を妨げた・させた、遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した、などの人は、相続人となれない。前妻の子だから適用されるのではなく、すべての相続人に共通 | 民法第891条 |
| 廃除 | 遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待をし、または重大な侮辱を加えたとき、またはその他の著しい非行があったとき、被相続人は、家庭裁判所に廃除を請求できる。遺言で意思を表示したときは、遺言執行者が請求し、被相続人の死亡の時にさかのぼって効力を生ずる。被相続人は、いつでも廃除の取消しを請求できる | 民法第892条〜第894条 |
| 相続放棄 | 本人が、家庭裁判所に申述する。初めから相続人とならなかったものとみなされる | 民法第938条・第939条 |
廃除に当たるかどうかは、家庭裁判所が事実をみて判断します。条文は、疎遠であることや、離婚の経緯だけを、廃除の要件にしていません。
廃除が認められると、その人は相続権そのものを失い、その人の子が代襲して相続人になります(民法第887条第2項)。要件に当たる事実は、証拠で示す必要があります。請求するかどうかは、弁護士に確かめてください。
遺言で、共同相続人の相続分を定めたり(民法第902条)、財産を包括または特定の名義で処分したり(第964条)できます。ただし、子には遺留分があります。
遺留分の割合(民法第1042条)
| 相続人の組み合わせ | 遺留分の全体 | 前妻の子の遺留分 |
|---|---|---|
| 配偶者と子 | 遺産の2分の1 | 全体の2分の1×その子の法定相続分 |
| 子のみ | 遺産の2分の1 | 全体の2分の1×その子の法定相続分 |
計算例(贈与・債務がない場合の目安です)。相続人が、現在の配偶者・現在の子1人・前妻の子1人で、遺産が4,000万円、遺言で全財産を現在の配偶者に渡すとします。
請求は、遺留分権利者が相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間行使しないと、時効で消滅します。相続開始の時から10年を経過したときも同じです(民法第1048条)。実際の請求の手順は遺留分を自分で請求するには、請求された側の対応は遺留分を請求されたらにあります。
遺言の書き方は遺言書の書き方にあります。遺留分に当たる金額を、現金で払えるように準備しておく考え方もあります(筆者の整理)。
生前贈与は、遺留分の計算に入る範囲が、民法第1044条で決まっています。
遺留分の計算に入る生前贈与(民法第1044条)
| 贈与の相手 | 入る期間 | 補足 |
|---|---|---|
| 相続人以外 | 相続開始前の1年間 | 当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与したときは、1年前より前の贈与も入る |
| 相続人(配偶者・現在の子など) | 相続開始前の10年間 | 婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与に限る |
生前贈与は、相続分の計算でも、特別受益として考慮されることがあります(民法第903条。特別受益とは)。
生命保険は、保険契約者が、保険事故が発生するまで、保険金受取人を変更できます(保険法第43条)。受取人が指定された死亡保険金は、相続税では、相続等により取得したものとみなされ、受取人が相続人であれば、500万円×法定相続人の数まで非課税です(国税庁 No.4114)。前妻の子も、法定相続人の数に入ります。
遺留分の計算で、死亡保険金がどう扱われるかは、事案で変わります。保険金の額、遺産の額、他の相続人との関係などで、結論が違う場合があるため、弁護士に確かめてください。
遺留分を放棄するかどうかは、前妻の子本人が決めます。民法第1049条第1項は、相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、効力を生ずると定めています。
遺留分放棄の許可(裁判所の手続案内)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立人 | 遺留分を有する相続人(前妻の子本人) |
| 申立ての時期 | 相続開始前(被相続人の生存中) |
| 申立先 | 被相続人の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手 |
| 標準的な添付書類 | 被相続人の戸籍謄本、申立人の戸籍謄本 |
共同相続人の1人がした遺留分の放棄は、他の共同相続人の遺留分に影響しません(民法第1049条第2項)。
頼まれた側は、断ることもできます。許可するかどうかは、家庭裁判所が判断します。
前妻の子がいる家庭で遺言を書くときは、次の順に確かめます。
遺言の内容と、遺留分を巡る争いの見通しは、弁護士に相談して決めます。遺言を巡る手続きの相談先は、遺言書の作成を誰に相談するかにあります。
前妻の子との相続は、遺言の内容、遺留分の計算、生前贈与の扱いが絡み、法律の専門家に相談する場面です。相談先の探し方は、費用が心配かどうかで分かれます。
相談の前に、次を手元に出しておくと話が早く進みます(筆者の整理)。
遺言は書けますが、前妻の子には遺留分があります。遺留分を侵害した遺言は、法律上無効となるわけではありませんが、前妻の子が遺留分侵害額請求をすると、侵害額に相当する金銭を払う義務が生じます(裁判所の手続案内、民法第1046条)。
子の遺留分は、遺産の2分の1に、その子の法定相続分を掛けた割合です(民法第1042条)。配偶者・現在の子1人・前妻の子1人なら、前妻の子の法定相続分は4分の1なので、遺留分は8分の1です。
被相続人に対する虐待、重大な侮辱、その他の著しい非行があるときに、家庭裁判所に廃除を請求できます(民法第892条)。疎遠であることだけを要件にする条文はなく、要件に当たるかは家庭裁判所が判断します。
相続人への贈与は相続開始前の10年間(婚姻・養子縁組のため、または生計の資本として受けたものに限る)、相続人以外への贈与は相続開始前の1年間が、遺留分の計算に入ります。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知っていたときは、さらに前の贈与も入ります(民法第1044条)。
保険契約者は、保険事故が発生するまで、保険金受取人を変更できます(保険法第43条)。ただし、遺留分の計算で死亡保険金がどう扱われるかは、事案で変わります。弁護士に確かめてください。
相続の開始前に遺留分を放棄するには、家庭裁判所の許可が要ります(民法第1049条第1項)。申立人は遺留分を有する相続人本人で、放棄するかどうかは本人が決めます。
遺産の総額がいくらで、相続税がかかるかは、先に計算機で確かめられます
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