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家族信託をしても、委託者が亡くなったときの相続税は、信託しなかった場合と同じ相続税法のもとで課税されます。親の死亡で新たに受益者になった人や、信託の終了で残余財産を受け取る人は、財産を遺贈により取得したものとみなされ(相続税法第9条の2)、信託財産に属する資産と負債を取得したものとして相続税が計算されます(同条第6項)。受益権の価額は、信託財産を財産評価基本通達の定めで評価した価額が基になります(通達202)。信託したことで評価額が下がる定めは、この記事で確かめた条文・通達にはありません。この記事では、課税される場面、相続税対策になるのか、自宅や賃貸物件を信託した場合、受益権の評価、申告、家族信託を使うかどうかの考え方を順に整理します。
かかる場合があります。相続税法第9条の2は、適正な対価を負担せずに信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する人と特定委託者)になった人は、信託に関する権利を、元の受益者等などから贈与(死亡に基づく場合は遺贈)により取得したものとみなす、と定めています。親の死亡で何が起きるかは、信託の形で変わります。
委託者(親)が亡くなったときの、信託の形と相続税法の扱い
| 信託の形 | 親の死亡で起きること | 根拠(相続税法) | 課税のされ方 |
|---|---|---|---|
| 親が受益者で、死亡後は子が受益者になる定めがある(信託法第90条の遺言代用信託、または受益者の死亡で次の人が受益権を取得する定め) | 子が新たに受益者になる | 第9条の2第2項 | 子が、親から遺贈により信託に関する権利を取得したものとみなされ、相続税の対象になる |
| 親が受益者で、親の死亡で信託が終了し、残余財産が子(帰属権利者)に渡る | 子が残余財産の給付を受けるべき者になる | 第9条の2第4項 | 子が、親から遺贈により残余財産を取得したものとみなされる。終了の直前に子が受益者として有していた権利に相当する部分は除かれる |
| 遺言で信託を設定した(遺言信託) | 遺言の効力で、信託の効力が生じる | 第9条の2第1項(死亡に基因して信託の効力が生じる場合は遺贈) | 受益者等になる人が、遺贈により信託に関する権利を取得したものとみなされる |
| 最初から子が受益者(他益信託)で、親の死亡で受益者が変わらない | 受益者は同じ | 第9条の2第1項(信託の効力が生じた時) | 死亡時に新たに受益者になる人はいない(筆者の整理)。信託したときの贈与税は家族信託の税金で整理した |
条文は e-Gov で2026年10月28日に確認しました。表は条文を読んだ筆者の整理で、個別の信託の判断ではありません。
どの形でも、みなされて受益権を取得した人は、信託財産に属する資産と負債を取得したものとして相続税法の規定が適用されます(第9条の2第6項)。信託財産の名義が受託者の子に変わっていても、相続税の対象になるのは受益者になった人などです。
信託しただけで相続税の額が下がる定めは、この記事で確かめた条文・通達にはありません。理由は3つあります。
家族信託が決めるのは、財産を管理・処分する人(信託法第26条の受託者の権限)と、財産の行き先です。相続税の額を左右するのは、財産の評価、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数。国税庁 No.4152)、特例、贈与の使い方で、これらは相続税を合法的に減らす生前対策5選と基礎控除の記事で整理しています。
この記事の判断は、条文と通達を読んだ筆者の整理です。自分の信託でいくらになるかは、財産の中身と信託の内容で変わります。先に相続税の計算機で概算を出しておくと、専門家に聞く内容が決まります。
相続税の扱いは変わりません。信託する財産によって、評価と、そのあとの手続きで確かめる点が違います(筆者の整理です)。
信託の形別に見た、相続税の扱いと先に確かめること
| ご自身の場合 | 相続税の扱い(確かめた条文より) | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 自宅だけを信託し、親が受益者。死亡後は子が受益者になる | 子が親から遺贈により取得したものとみなされ(第9条の2第2項)、自宅の宅地と建物を取得したものとして計算される(同条第6項)。宅地や建物の評価の手順は不動産の評価方法 | 小規模宅地等の特例(No.4124)の条件は、取得する人と住まい方で決まる。信託している宅地で使えるかは、申告前に税務署か税理士に確かめる |
| 賃貸物件を信託し、親が受益者 | 親が受益者の間の賃料は、親の収入として扱われる(所得税法第13条第1項)。死亡後は新しい受益者の収入。受益権の価額は、信託した土地と建物を通達の定めで評価した価額が基になる | 賃料がたまった口座の残高は、信託口口座でも親の口座でも相続税の計算に入る。賃料の入金先を決めておく |
| 受託者が子で、受益者ではない | 受託者であることだけでは、受益権を取得したとはみなされない。相続税の対象になるのは受益者になった人(第9条の2第1項・第2項) | 信託財産は受託者の財産と分けて管理する(信託法第34条)。子の預金と混ぜない |
| 委託者と受益者が同じ(自益信託)で、親の死亡で信託が終わり、財産は相続人へ渡す | 残余財産の給付を受ける人が、遺贈により取得したものとみなされる(第9条の2第4項) | 帰属権利者を契約書で決める。定めがないと、委託者またはその相続人が帰属権利者とみなされる(信託法第182条第2項) |
| 子が複数で、受益権を分ける | 元本と収益の受益者が一部ずつ受けるときは、信託財産の価額に受益割合を乗じて評価する(通達202(2)) | 受益割合を契約書に書く |
相続や遺贈で取得した財産の価額は、取得の時の時価によります(相続税法第22条)。信託の受益権は、財産評価基本通達202が次の3つに分けて定めています。
信託の利益を受ける権利の評価(財産評価基本通達202)
| 受益者の関係 | 評価の仕方 |
|---|---|
| 元本と収益の受益者が同じ人 | 課税時期における信託財産の価額(通達の定めにより評価した価額) |
| 元本と収益の受益者が、元本及び収益の一部を受ける | 課税時期における信託財産の価額に、その受益割合を乗じた価額 |
| 元本の受益者と収益の受益者が違う | 元本を受益する場合は、信託財産の価額から収益受益者の権利の価額を控除した価額。収益を受益する場合は、将来受けるべき利益の価額に、受益の時期までの期間に応じた基準年利率による複利現価率を乗じた金額の合計額 |
国税庁の財産評価基本通達の原文(2026年10月28日確認)。元本と収益の受益者を同じ人にする定めなら、1行目に当たります。
1行目で評価の基になる「信託財産の価額」は、信託に入れた財産ごとに通達の定めで評価します。宅地は路線価や倍率、建物は固定資産税評価額が基本で、手順は不動産の評価方法にあります。
家族信託がある場合の、相続税の申告と受託者の書類
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 申告する人 | 相続や遺贈により財産を取得した人。受益権を遺贈により取得したとみなされた人も、この「取得した人」に含まれる(筆者の整理) | 相続税法第27条・第9条の2 |
| 申告の期限 | 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内 | 相続税法第27条・国税庁 No.4205 |
| 申告が要る場合 | 財産の価額の合計が、遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるとき | 国税庁 No.4205・No.4152 |
| 受託者が出す書類 | 受益者等が変わったとき、信託が終了したときなどは、その事由が生じた日の属する月の翌月末日までに、受益者別の調書を受託者が税務署長に出す | 相続税法第59条第3項 |
2026年10月28日に e-Gov と国税庁で確認しました。
調書の提出は受託者の義務で、申告をする受益者の義務とは別です。親の死亡で受益者が変わると、受託者を務める子が調書を出す場面があります。信託財産の価額の合計が50万円以下の場合などは、提出しなくてよいと財務省令に定められています(相続税法施行規則第30条第7項)。申告書の作成を頼む先は相続税の申告を税理士に頼む費用で比べられます。
家族信託を使う目的で分けて考えます。相続税の額を減らしたいだけなら、家族信託は第一の手段ではありません(上の節)。管理や承継の悩みがあるなら、家族信託が合う場面があります(筆者の整理です)。
目的別に見た、家族信託と相続税
| 目的 | 家族信託で足りるか | 先に比べるもの |
|---|---|---|
| 相続税の額を減らしたい | 信託だけでは、評価や基礎控除の枠は変わらない | 生前対策5選、基礎控除 |
| 認知症になる前に、自宅や賃貸物件を売れる・管理できる形にしたい | 受託者が信託財産を管理・処分できる(信託法第26条)ため、目的に合う | 成年後見との比べ方、費用の相場 |
| 親の死亡後の財産の行き先を決めておきたい | 受益者の指定や帰属権利者で決められる。遺言でも決められる | 遺言書の種類と書き方、家族信託の仕組みとメリット・デメリット |
管理や承継のために家族信託を使うなら、相続税は別に試算して一緒に考えます。信託の形(誰が受益者か、親の死亡後に誰へ渡るか)で、上の表のどこに当たるかが決まります。
契約書の内容が、親の死亡時の課税の入口になります。次の5つは、家族で話しておくと、専門家との相談が進みます(筆者の整理です)。
費用は家族信託の費用の相場にまとめています。
信託しただけで相続税の額が下がる定めは、相続税法・財産評価基本通達を確かめた範囲にありません。受益権の価額は信託財産を通達の定めで評価した価額が基になり(通達202)、受益権を取得した人は信託財産の資産と負債を取得したものとして課税されます(相続税法第9条の2第6項)。
受託者であるだけでは、受益権を取得したとはみなされません。相続税の対象になるのは、受益者などになった人です。受益者等が存しない信託で、受益者等になる人が委託者の親族のときは、受託者が取得したものとみなされます(相続税法第9条の4第1項)。
含めます。親の死亡で受益者になった人や、残余財産の給付を受ける人は、財産を遺贈により取得したものとみなされ(相続税法第9条の2)、申告が必要かどうかは、財産の合計が基礎控除額を超えるかで決まります(国税庁 No.4205)。
国税庁 No.4124 は、取得する人と住まい方などで条件を定めています。信託している宅地で使えるかは、申告前に税務署か税理士に確かめてください。
このサイトの相続税の計算機で、財産と法定相続人の数から概算を出せます。家族信託に入れる財産も、入れない財産も、合計して試算します。
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