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節税対策 2026年5月5日 読了 約9分

争族を防ぐ家族信託の仕組みとメリット・デメリット【成年後見との違い】

「親が認知症になったら、実家の売却も銀行の手続きもできなくなる」—— こうした財産凍結リスクを事前に防ぐ仕組みとして注目されているのが家族信託です。 成年後見制度との違い・できることとできないこと・費用の目安まで解説します。

1. 家族信託とは何か

家族信託(民事信託)とは、財産を持つ人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に 財産の管理・処分を委ね、その利益を受取人(受益者)が受け取る仕組みです。 法務省のデータによると、成年後見制度の利用者数は年々増加しており、家族信託との使い分けが注目されています。

家族信託の3当事者

役割内容典型例
委託者財産を信託する人親(父・母)
受託者財産を管理・運用する人子(長男・長女)
受益者財産から利益を受ける人親(委託者と同じことが多い)

委託者と受益者が同一人物(親)の場合、実質的には「子が親の財産を管理する」形になります。 親が認知症になっても、受託者である子が引き続き財産を管理・処分できます。

「信託」と「信託銀行」は別物: 家族信託は家族間の契約に基づく私的な制度です。 信託銀行が運営する「商事信託」とは異なり、費用が大幅に低く抑えられます。

2. 成年後見制度との違い

家族信託と成年後見制度の比較

項目家族信託成年後見制度
設定のタイミング判断能力があるうちに設定(必須)判断能力低下後でも申立可
財産の活用柔軟性高い(契約内容に従って自由)低い(家庭裁判所の監督が必要)
不動産の売却受託者が契約に従って実行できる家庭裁判所の許可が必要
費用設定時のみ(数十万円)後見人報酬が継続して発生(月2〜6万円)
身上保護対応できない医療・介護の手続きにも対応

家族信託は財産管理に特化しており、医療・介護施設への入所などの「身上保護」には使えません。 認知症が進んだ場合の身上保護は引き続き成年後見制度を利用する必要があります。

3. 家族信託でできること

不動産の管理・売却

信託した不動産は受託者名義で登記されます(信託登記)。 親が認知症になっても、受託者(子)が賃貸管理・売却・リフォームなどを行えます。

株式・有価証券の管理

上場株式の議決権行使・売買も受託者が行えます。 ただし、対応できる証券会社が限られているため事前確認が必要です。

複数世代の承継設計(受益者連続型信託)

「父が死亡したら受益者を母に変更、母が死亡したら子に変更」という 複数世代にわたる財産承継を設計できます。 これは遺言書では実現できない、家族信託特有の機能です。

受益者連続型信託の税務に注意: 受益者が変わるたびに相続税・贈与税の課税関係が発生します。 複雑な承継設計を行う場合は税理士との事前確認が不可欠です。

4. 家族信託の設定手順

  1. 信託の目的・内容を設計する:何を信託するか・受託者・受益者・信託終了の条件など
  2. 信託契約書を作成する:弁護士・司法書士に依頼して信託契約書を作成
  3. 公正証書化する(推奨):公証役場で公正証書にすることで改ざんリスクを防ぐ
  4. 信託口口座の開設:受託者名義の専用口座(信託口口座)を開設して信託財産を管理
  5. 不動産の信託登記:不動産を信託する場合は法務局で信託登記を申請
判断能力があるうちに設定することが絶対条件: 家族信託は委託者(親)が契約を理解・合意できる判断能力があるときにしか設定できません。 認知症が進んだ後では設定できないため、「まだ元気なうち」が設定のベストタイミングです。

5. 費用の目安

家族信託の設定費用の目安

費用項目金額の目安
弁護士・司法書士への設計・契約書作成報酬30〜80万円
公正証書費用(公証役場)5〜10万円程度
不動産信託登記費用(登録免許税)固定資産税評価額の0.3〜0.4%
信託口口座開設費用金融機関によって異なる(0〜数万円)

設定時の費用は合計で数十〜百万円超になることもありますが、 成年後見制度と比較すると後見人への継続報酬(月2〜6万円×数年〜十数年)が不要なため、 長期的にみてコスト優位になる場合があります。

6. デメリットと向いているケース・向いていないケース

家族信託のデメリット

向いているケース

向いていないケース

参考・出典

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