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貸金庫の中身は、現金・宝石・貴金属・有価証券など、金銭に見積もれるものはすべて相続税の対象で、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内の申告に、財産として入れます(国税庁 No.4105・No.4205)。「貸金庫は自宅と違って税務署に分からない」と考えて申告から外し、あとで隠したと判断されると、重加算税の対象になりえます(国税通則法第68条)。国税庁が公表した令和6事務年度の資料に貸金庫を名指しした事例はありません。ただ、相続開始前に引き出した現金を相続人の自宅の金庫に保管して申告から除外した事例は、重加算税つきで追徴税額が約1億2千万円でした。この記事では、中身の確認と財産目録、現金・金・宝石の評価、「空っぽ」と言われたとき、税務調査で見られる点を順に書きます。貸金庫の開け方と解約は亡くなった人の貸金庫の開け方と解約にあります。
国税庁は、相続税がかかる財産を「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」と説明しています(No.4105)。貸金庫に入っているかどうかで、扱いは変わりません。
貸金庫に入っているものと、相続税の扱い
| 中身 | 相続税の扱い | 根拠・参照 |
|---|---|---|
| 現金 | 対象。相続開始の時にあった金額で財産に入れる | 国税庁 No.4105 |
| 宝石・貴金属・金地金 | 対象。金銭に見積もれる経済的価値のあるもの。宝石は No.4105 に例示されている | 国税庁 No.4105、相続税法第22条 |
| 株券・債券・投資信託の証書 | 有価証券として対象 | 国税庁 No.4105、株・投資信託の評価 |
| 不動産の権利証・登記関係の書類 | 書類そのものではなく、土地・家屋が対象 | 国税庁 No.4105 |
| 貸付金の借用証書 | 貸付金として対象 | 国税庁 No.4105 |
| 生命保険の証券 | 被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金は、みなし相続財産として対象 | 国税庁 No.4105 |
| 書画・骨とう品 | 対象。評価は通達135 | 書画骨董・ゴルフ会員権の評価 |
| 遺言書・通帳・印鑑 | 書類自体は財産ではない。通帳は残高の預貯金が対象 | ― |
自分に近い行から見てください。
状況ごとの、進め方
| あなたの状況 | 進め方 | 読む節 |
|---|---|---|
| 中身をまだ見ていない | 全員の立会いで開けて、品目と数量を記録し、財産目録に入れる | 「財産目録」の節 |
| 現金・金・宝石が出てきた | 相続開始日の価額で財産に入れる。金・宝石は根拠になる書類を残す | 「評価」の節 |
| 開けたら空だった、または空だと言われた | 誰が・いつ・何を出したかを切り分ける | 「空っぽ」の節 |
| 他の相続人が先に開けたようだ | 勝手な持ち出しは遺産の使い込みの問題になる | 「空っぽ」の節 |
| 申告から外したらどうなるか知りたい | 加算税の種類と率、税務調査の公表資料を見る | 「税務調査」の節 |
| 申告が必要かどうか分からない | 中身を含めた遺産が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかで決まる | 下の計算機 |
貸金庫は銀行で相続手続きをして開けます(開け方と解約)。開けたら、その場で中身を記録します。相続税の申告書には、亡くなった時点の財産と債務、取得した人ごとの明細を記載した明細書などを付けることになっています(相続税法第27条第4項)。
財産目録に書く項目の例
| 中身 | 書くこと |
|---|---|
| 現金 | 金額(紙幣・硬貨・外貨の別) |
| 金地金・貴金属 | 品名、重さ、刻印、購入時の書類 |
| 宝石 | 種類、大きさ、鑑定書の有無 |
| 有価証券 | 銘柄、数量、取扱いの証券会社 |
| 不動産の書類 | 所在・地番、名義人 |
| 借用証書 | 貸付先、金額、日付、返済の状況 |
| 書画・骨とう品 | 作者、大きさ、鑑定書の有無 |
相続で取得した財産の価額は、取得の時における時価によります(相続税法第22条)。相続による取得の時は、亡くなった日です。
品目ごとの評価の考え方
| 中身 | 評価の考え方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 現金 | 亡くなった日にあった金額 | 相続税法第22条 |
| 金地金・貴金属・宝石 | 一般動産として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。原則として1個または1組ごとに評価する | 財産評価基本通達128・129 |
| 家庭用の品物 | 1個または1組の価額が5万円以下のものは、一括して評価できる場合がある | 財産評価基本通達128 |
| 書画・骨とう品 | 売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する | 財産評価基本通達135 |
財産評価基本通達の目次には、金地金だけを対象にした評価の項目は見つけられませんでした。金の価格は日々動くので、亡くなった日の買取価格を確かめた記録や、宝石の鑑定書など、価額の根拠になる書類を残しておくと、申告の説明がしやすくなります。個別の品物の評価で迷うときは、税理士に確かめてください。
空だったと伝えられても、そのまま信じて終わりにせず、誰が、いつ、何を確認したかを切り分けます。
場面ごとの、動き方
| 場面 | 考えられること | 動き方 |
|---|---|---|
| 全員の立会いで開けて、実際に空だった | 生前に本人が中身を出した、または最初から入っていなかった | 開けた日と立会人を記録する。預金の出金や贈与の記録を確かめる(取引履歴の取り寄せ) |
| 「空だった」と聞いただけで、自分は見ていない | 確認した人の説明だけでは、本当に空かが分からない | 相続人が立ち会って開ける。全員がそろわないときは事実実験公正証書で状態を残す |
| 他の相続人が先に開けて、持ち出した疑いがある | 遺産の使い込みの問題になる | 取引や開扉の状況を確かめ、返還を求めるかを決める(遺産の使い込みを疑われたら) |
| 自分が先に開けて、中身を持ち出した | 処分したときは単純承認とみなされる。隠したまま放棄しても、同じ扱いになる場合がある | 民法第921条第1号・第3号。持ち出したものは財産目録に入れる |
被相続人が生前に中身を誰かに渡していた場合、相続開始前3年以内(相続開始日が令和8年12月31日以前の場合)に被相続人から贈与を受けた財産は、相続や遺贈で財産を取得した人については、相続税の対象に加わります(国税庁 No.4105)。
銀行が、契約者以外の開扉の履歴をどこまで開示するかは、確認した公表資料からは分かりませんでした。契約店に聞いてください。
申告漏れが見つかると、本税のほかに加算税がかかります。次の率は国税通則法の条文の基本の率で、税額が一定額を超えると率が上がる定めもあります。
加算税の基本の率(国税通則法)
| 場面 | 加算税 | 基本の率 |
|---|---|---|
| 期限内に申告したが、あとで不足が見つかった | 過少申告加算税 | 10%(調査で更正されると予知する前に自分から修正申告したときは5%) |
| 申告をしていなかった | 無申告加算税 | 15%(調査で更正・決定されると予知する前に自分から申告したときは10%) |
| 財産を隠蔽・仮装して、過少に申告した | 重加算税(過少申告の場合) | 35% |
| 財産を隠蔽・仮装して、申告しなかった | 重加算税(無申告の場合) | 40% |
第65条・第66条・第68条。この表は条文の基本の率です。個別の事案は、税務署または税理士に確かめてください。
令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の相続税の調査等の状況
| 項目 | 公表された数字・事例 |
|---|---|
| 実地調査の件数 | 9,512件 |
| 申告漏れ等の非違があった件数 | 7,826件(非違割合82.3%) |
| 重加算税を課した件数 | 1,065件 |
| 追徴税額の合計 | 824億円 |
| 事例(現金の保管) | 相続開始前に被相続人の預金から多額の現金が引き出されていたため、使途を調べた。相続人の自宅の金庫から多額の現金が見つかった。申告から除外していた。増差課税価格は約2億5千万円、追徴税額は約1億2千万円(重加算税あり) |
| 事例(預金の移動) | 被相続人の財産が基礎控除以下になるよう、相続人やその家族の口座へ預金を移した。相続人とその家族の取引金融機関や残高が書かれたノートが見つかった。増差課税価格は約7億2千万円、追徴税額は約4億3千万円(重加算税あり) |
国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」(令和7年12月)。この資料に、貸金庫を名指しした事例は掲載されていません。
国税庁の職員は、相続税に関する調査で必要があるときは、納税義務がある人のほか、その人の財産を保管したと認められる人にも質問し、帳簿書類などを検査できます(国税通則法第74条の3第1項)。また、公証人が作成した公正証書のうち、納税義務がある人に関する部分の閲覧を求めたり、内容を公証人に質問したりすることもできます(同条第2項)。貸金庫の中身を申告から外しても、財産の預け先や取引の記録から分かる可能性があります。
隠さず、中身を財産目録に入れて申告するのが、最も確実な進め方です。申告するかどうかの見当は、下の計算機でつけられます。基礎控除の考え方は相続税の基礎控除にあります。税務調査の一般的な流れは相続税の税務調査とはに書きました。
「必ずばれる」とは言えません。ただし、国税通則法は、相続税の調査で、納税義務がある人の財産を保管したと認められる人への質問や検査を認めています(第74条の3)。財産を隠蔽・仮装して申告しなかったり少なく申告したりすると、重加算税(過少申告の場合35%、無申告の場合40%)の対象になりえます(第68条)。
貸金庫の現金だけで決まるのではなく、貸金庫の中身を含めた遺産の合計が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかで決まります(国税庁 No.4152)。申告期限は、亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です(No.4205)。
一般動産として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するのが原則です(財産評価基本通達129)。財産評価基本通達の目次に、金地金だけを対象にした評価の項目は見つけられませんでした。亡くなった日の買取価格の記録や鑑定書など、根拠になる書類を残してください。
遺言書に書かれていない財産は、相続人全員の共有になり(民法第898条第1項)、遺産分割協議で分け方を決めます。協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方にあります。
相続財産を処分したとみなされると、単純承認になります(民法第921条第1号)。相続放棄をした後でも、財産を隠匿した場合は単純承認とみなされます(同条第3号)。税の面では、申告から外すと重加算税の対象になりえます。
空でも貸金庫の契約は残ります。三菱UFJ銀行の貸金庫規定は、解約したあとの明け渡しが遅れると、使用料相当額の遅延損害金がかかると定めています。手続きは亡くなった人の貸金庫の開け方と解約に書きました。
貸金庫の中身を含めた遺産にかかる相続税は、先に計算機で確かめられます
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