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親の預金を引き出していて、他の相続人から使い込みを疑われたとき、最初にすることは、引き出した日付・金額・使い道を、取引履歴と領収書で並べることです。親の生活費・医療費・介護費用・葬儀費用のように、親のために使ったお金なら、その記録が説明の土台になります。取引履歴は、相続人であれば、他の相続人の同意がなくても金融機関に開示を求められます(最高裁 平成21年1月22日第一小法廷判決)。亡くなった後の引き出しは、相続人全員の同意で、遺産分割のときに遺産として存在するものとみなされることがあります(民法第906条の2)。相続税の面では、国税庁が公表している調査事例に、被相続人名義の口座から相続開始前に多額の現金が引き出されていたため、その使途を解明するために調査に着手した例があります。引き出しの記録は、相続税の申告のときにも役に立ちます。この記事は、疑われた側が確かめることを、条文・国税庁の原文でまとめたものです。疑う側の方は、遺産を使い込まれたらどうするをご覧ください。
疑われた側が最初にすることは、反論ではなく、記録を並べることです。
疑われたときに最初にすること(筆者の整理)
| 順番 | すること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 取引履歴を取り寄せ、引き出しの日付・金額・回数を一覧にする | 共同相続人の1人は、単独で、被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求められる(最高裁 平成21年1月22日判決)。自分で取れるので、相手の主張を待たずに全体を見られる |
| 2 | 各引き出しに、使い道と、領収書・請求書・明細を対応させる | 親のために使ったお金かどうかは、使い道の記録で示す |
| 3 | 親から頼まれていた・親がくれた、という事情があれば、その裏づけ(手紙・メッセージ・同席した人)を集める | 頼まれていたなら委任、くれたなら贈与。どちらかで、条文上の扱いが違う(次の節) |
| 4 | 引き出しを認める・否定する前に、弁護士に相談する | 返還を求められたときの時効・手続き・遺産分割での扱いは、事案で変わる |
手元に残っている現金や、引き出したあと別の口座に入れたお金がある場合は、使い道の記録とは別に、そのお金の所在も整理しておきます。
自分に近い行から見てください。
状況ごとの、先に確かめること
| あなたの状況 | 先に確かめること | 次に読むところ |
|---|---|---|
| 親と同居して、世話をしていた | 親の生活費・医療費・介護費用に使った分と、自分のために使った分を分けて並べる。介護の貢献は、寄与分(民法第904条の2)として評価される場合がある | 本記事「生活費・介護費用・葬儀費用は」、寄与分とは |
| 亡くなる前に引き出した | 親から頼まれていたか。頼まれていたなら、受任者として、委任事務の処理の状況の報告と、受け取った金銭の引渡しの義務がある(民法第645条・第646条)。亡くなると委任は終了し(第653条)、終了後は遅滞なく経過と結果を報告する(第645条) | 遺産を使い込まれたらどうする |
| 亡くなった後に引き出した(葬儀費用など) | 相続人全員の同意で、遺産分割のときに遺産として存在するものとみなされることがある(民法第906条の2)。葬儀費用などで急いで必要なときの、預貯金の払戻し制度がある(第909条の2。1金融機関につき150万円まで) | 相続した預金口座の払い戻し手続き |
| 金額が少ない | 少額でも、記録を残しておくと説明が早い。引き出しが何回も続いているときは、合計額で見られることがある(筆者の整理) | 本記事「記録の残し方」 |
| 領収書がない・少ない | 出金メモ、施設の請求額、医療費の通知、振込の控えなど、代わりになるものを集める | 本記事「記録の残し方」 |
| 相続税の申告がこれから | 申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月(国税庁 No.4205)。引き出しの記録は、申告の前に整理する | 本記事「相続税の申告と調査」、相続税の税務調査とは |
使い込みかどうかは、引き出したお金が誰のために、どんな根拠で使われたかで分かれます。使い道ごとに、条文や国税庁の案内で確かめられることを並べます。
使い道ごとの、確かめられること
| 使い道 | 確かめられること | 残す記録 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 親の生活費・医療費・介護費用 | 親の財産を親のために使ったか。親から頼まれていたか。頼まれていたなら、報告と引渡しの義務(民法第645条・第646条)を負う | 病院・施設・介護サービスの請求書と領収書、親の同意が分かるもの | 民法第645条・第646条 |
| 葬儀費用 | 国税庁は、葬儀・葬送の費用、お通夜の費用、お寺へのお礼などを、相続税の計算で遺産総額から差し引ける葬式費用と案内している。香典返し、墓石・墓地の買入れ、初七日など法事の費用は含まれない | 葬儀社の請求書と領収書、お寺へのお礼の記録 | 国税庁 No.4129 |
| 親から「もらった」お金 | 贈与なら、書面によらない場合、履行の終わった部分は解除できない(民法第550条)。贈与を受けた人がいれば、特別受益として相続分の計算に入る場合がある(第903条)。生活費として受け取ったお金が、贈与税でどう扱われるかは国税庁が案内している | 贈与の事実が分かるもの(手紙・メッセージ・贈与契約書) | 民法第549条・第550条・第903条、国税庁 No.4405 |
| 自分の生活費・自分の支払い | 親の了解の有無で見方が変わる。親の了解が記録に残っていると、説明しやすい | 親の了解が分かるもの。記録がないときは、どう説明できるかを弁護士と整理する | 民法第703条(法律上の原因のない利益) |
国税庁No.4129は相続税の計算での葬式費用の範囲の案内です。葬儀費用を誰がどう負担するか、遺産から出してよいかは、相続人どうしの話し合いの問題で、別に確かめます。
国税庁No.4405は、扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で通常必要と認められるものには贈与税がかからないとしたうえで、必要な都度直接これらに充てるためのものに限ると案内しています。預金したり、株式や不動産の買入資金に充てたりした場合は、贈与税がかかる扱いになります。
説明に使える記録は、あとから作るより、引き出した時点で残す方が確かです。次は、いま手元にあるものから集めるときの一覧です(筆者の整理)。
記録の種類と残し方
| 記録 | 残し方 | ないとき |
|---|---|---|
| 通帳・取引履歴 | 通帳をコピー・撮影して保管する。取引履歴は、金融機関に開示を求めて取り寄せる | 判決のとおり、共同相続人の1人が単独で開示を求められる |
| 領収書・請求書 | 病院、施設、介護サービス、葬儀社のものを、日付順にまとめる | 施設の請求額、医療費の通知、振込の控えで代える |
| 出金メモ | 引き出した日・金額・使い道を、そのつど書く。日付と使い道は、取引履歴と1対1で対応させる | 手元の資料から、あとで引き出しごとの使い道を書き起こす |
| 親の同意 | 通帳の管理を頼まれたとき、手紙・メッセージ・同席した人の名前を残す | 同席した人に、その事実を書面で書いてもらう |
| 親のお金と自分のお金の区別 | 親のお金は、親の口座の中で動かす。自分の財布と混ぜない | 混ざってしまったときは、混ざった時期と金額を一覧にする |
亡くなった後は、他の相続人と共有している預金を動かす前に、まず相続人の間で目的と金額を共有しておくと、あとで疑われにくくなります。急いで必要な費用には、預貯金の払戻し制度があります(民法第909条の2)。1金融機関につき払い戻せる上限は150万円です(法務省令)。手続きは相続した預金口座の凍結解除と払い戻し手続きにあります。
国税庁は、相続税の対象になる財産を、現金、預貯金、有価証券、土地、家屋などのほか、貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものと案内しています(No.4105)。引き出されたお金が手元に残っているとき、返還を求める権利があるときの扱いは、事案で変わります。申告の前に、税理士に確かめてください。
国税庁の「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査の件数は9,512件でした。公表されている事例①は、被相続人名義の預金口座から、相続開始前に多額の現金が引き出されていたことから、その使途を解明するため調査に着手したものです。この事例では、相続人が引き出した現金を自宅の金庫で保管したまま、関与税理士にも伝えず、申告から除外していました。
相続税の面で整理しておくこと(筆者の整理)
| 整理すること | 理由 |
|---|---|
| 引き出しの一覧(日付・金額・使い道) | 預金口座の動きは、金融機関の記録に残る。調査では、引き出された現金の使途が問われる例が公表されている |
| 手元に残っている現金の額 | 引き出したお金が残っているなら、申告の前に、遺産に含めるかを税理士に確認する |
| 葬儀費用の領収書 | 葬式費用は、一定の範囲で遺産総額から差し引ける(国税庁 No.4129)。範囲に入らないもの(香典返し、墓石、初七日など)は別に整理する |
| 亡くなった時点で未払いだった医療費・施設の費用 | 被相続人が死亡したときに現に存在した債務(未払金など)で確実と認められるものは、遺産総額から差し引ける(国税庁 No.4126) |
引き出しの使い道が記録で説明できるほど、税理士に確かめることも、他の相続人に説明することも、早く済みます。申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月です(国税庁 No.4205)。
他の相続人から返還を求められたときは、次の順に確かめます。
亡くなった後の引き出しは、遺産分割の中で扱われることがあります(民法第906条の2)。遺産分割の調停の流れは遺産分割調停とはにあります。
疑いへの対応は弁護士、相続税の申告や調査への備えは税理士、と分かれます。
相談の前に、取引履歴、引き出しの一覧、領収書、親の同意が分かるものを手元に出しておくと、話が早く進みます。
親の財産を親のために使ったと示せるかが分かれ目です。領収書・請求書と、親の同意が分かるものを残してください。頼まれて管理していたなら、受任者として報告と引渡しの義務があります(民法第645条・第646条)。個別の事案の判断は、弁護士に確かめてください。
取れます。最高裁は、共同相続人の1人は、被相続人名義の預金口座の取引経過の開示を求める権利を単独で行使できると判断しています(平成21年1月22日第一小法廷判決)。
国税庁は、葬儀・葬送の費用などを、相続税の計算で遺産総額から差し引ける葬式費用と案内しています(No.4129。香典返し、墓石・墓地の買入れ、初七日などは含まれません)。誰がどう負担するかは、相続人の間の問題です。亡くなった後に急いで必要な費用には、預貯金の払戻し制度があります(民法第909条の2。1金融機関につき150万円まで)。
施設の請求額、医療費の通知、振込の控え、出金メモなど、代わりになる記録を集めます。引き出した日付と使い道を、取引履歴と1対1で対応させた一覧にしておくと、説明しやすくなります。
窃盗(刑法第235条)や横領(第252条)にあたる場合があります。ただし、配偶者・直系血族・同居の親族の間では刑が免除され、それ以外の親族の間では告訴がなければ公訴を提起できません(第244条、第255条)。この特例は刑事責任についての定めです。
国税庁が公表している令和6事務年度の調査事例には、被相続人名義の預金口座から相続開始前に多額の現金が引き出されていたため、その使途を解明するために調査に着手した例があります。引き出しの記録は、申告の前に整理してください。
遺産の総額がいくらで、相続税がかかるかは、先に計算機で確かめられます
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