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延納は、相続税額が10万円を超え、金銭で納付することが困難な事由がある場合に、担保を出して年払いで納める制度です。物納は、延納によっても金銭で納付することが困難な事由がある場合に、一定の相続財産で納める制度です(国税庁 No.4211・No.4214)。どちらも、納期限(申告期限)までに申請書を税務署長に出し、許可を受ける必要があります。この記事では、延納と物納それぞれの要件、延納の利子税の割合と担保、物納できる財産の順位と、できない財産、申請期限と審査期間、却下されたときの道を、国税庁の原文で整理します。
延納と物納の違い
| 項目 | 延納 | 物納 |
|---|---|---|
| 納め方 | 何年かに分けて、金銭で納めます(年賦) | 相続などで取得した財産そのもので納めます |
| 要件の中心 | 相続税額が10万円を超えること。金銭で納付することを困難とする事由があること。担保を出すこと | 延納によっても金銭で納付することを困難とする事由があること。その困難な金額が限度です |
| 担保 | 延納税額と利子税に相当する担保が要ります。延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下なら不要です | 物納財産そのもので納めるため、延納のような担保は出しません |
| 利子 | 延納期間中は利子税がかかります | 許可までの一部の期間などに利子税がかかる場合があります |
| 申請の期限 | 納期限または納付すべき日(延納申請期限)まで | 納期限または納付すべき日(物納申請期限)まで |
| 許可または却下までの期間 | 延納申請期限から3か月以内。担保などの状況で、最長6か月まで延長する場合があります | 物納申請期限から3か月以内。申請財産の状況で、最長9か月延長する場合があります |
国税庁 No.4211・No.4214。相続時精算課税の適用を受けた財産などは、物納の対象にできません。
どちらも、相続税の本税が対象です。相続税に付く加算税・延滞税は延納の対象にならず、物納の対象にも、加算税・利子税・延滞税・連帯納付責任額はなりません(国税庁 延納・物納申請等)。そのため、払えないまま期限を過ぎて延滞税が増える前に、申請を出す必要があります。
自分に近い行から見てください。
状況ごとの、考え方
| あなたの状況 | 考え方 |
|---|---|
| 遺産の中心が自宅と土地で、預貯金は少ない | 延納を考えます。不動産等の割合が高いほど、延納期間が長く認められ、利子税の割合も低くなります |
| 預貯金はあるが、全部を払うと生活費が残らない | 延納できる金額は、預貯金など換価が容易な財産から、3か月分の生活費などを引いた額(現金納付額)を、相続税額から引いて計算します(国税庁の延納の手引) |
| 延納しても、毎年の返済が難しい | 物納を考えます。延納によっても金銭で納付することが困難な金額が、物納できる限度です |
| 担保に出せる財産がない | 担保は、国債・地方債・土地・保険に付けた建物・保証人の保証など、種類が決まっています。延納税額が100万円以下で延納期間が3年以下なら、担保は要りません |
| 売れる不動産がある | 売って払う道もあります。不動産を売って相続税を払うで、手順を整理しました |
| 借地権の土地・共有の不動産・境界が不明な土地を物納したい | 管理処分不適格財産に当たる場合があります。次の「物納」の節を見てください |
延納を申請できるのは、次のすべてを満たす場合です(国税庁 No.4211)。
延納できる期間と利子税の割合は、相続税額の計算の基礎になった財産のうち、不動産等が占める割合で決まります。令和8年の「特例割合」は、延納特例基準割合1.3%で計算した割合です。
延納期間(最高)と利子税の割合
| 不動産等の割合 | 区分 | 延納期間 | 利子税(年割合) | 令和8年の特例割合 |
|---|---|---|---|---|
| 75%以上 | 動産等に係る税額 | 10年 | 5.4% | 0.9% |
| 75%以上 | 不動産等に係る税額 | 20年 | 3.6% | 0.6% |
| 50%以上75%未満 | 動産等に係る税額 | 10年 | 5.4% | 0.9% |
| 50%以上75%未満 | 不動産等に係る税額 | 15年 | 3.6% | 0.6% |
| 50%未満 | 一般の延納相続税額 | 5年 | 6.0% | 1.0% |
国税庁 No.4211。森林計画立木や特別緑地保全地区等内の土地などの区分は、同ページの表にあります。特例割合は、延納特例基準割合が変わると変わるため、申請の際に所轄の税務署で確かめてください。
たとえば、延納税額が1,000万円で、全額が「不動産等の割合75%以上」の不動産等に係る税額なら、元本が残る最初の1年の利子税は、1,000万円×0.6%=約6万円が目安です。元本を返すにつれて、利子税は下がります。年数と割合を入れた概算は延納の利子税の計算ツールで出せます。
担保にできるのは、国債・地方債、確実と認められる社債などの有価証券、土地、保険を付けた建物・立木・登記される船舶など、鉄道財団・工場財団など、税務署長等が確実と認める保証人の保証です。相続で取得した財産に限らず、相続人自身の財産や、共同相続人・第三者の財産でも担保にできます(国税庁 No.4211)。
延納の手引では、延納許可限度額を次のように計算します。納期限に持っている現金・預貯金など換価が容易な財産の額から、申請者と生計を一にする親族の3か月分の生活費、事業の継続に当面(3か月分)必要な運転資金を引いた額が「現金納付額」です。納付すべき相続税額から現金納付額を引いた額が、延納許可限度額になります。
物納に充てられるのは、納付すべき相続税の課税価格の基礎になった相続財産のうち、日本国内にある財産で、次の順位のものです(国税庁 No.4214)。後順位の財産は、特別の事情があると税務署長が認める場合や、先順位の財産に適当な価額のものがない場合に限って使えます。
物納に充てる財産の順位
| 順位 | 財産 |
|---|---|
| 第1順位 | 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等。不動産と上場株式のうち物納劣後財産に当たるものは、第1順位の後ろに置かれます |
| 第2順位 | 非上場株式等。非上場株式のうち物納劣後財産に当たるものは、この後ろです |
| 第3順位 | 動産 |
国税庁 No.4214。登録を受けた特定登録美術品は、一定の書類を出すことで、順序にかかわらず物納に充てられます。
物納に使えない、または後回しになる財産があります。
国が収納するときの価額(収納価額)は、原則として、相続税の課税価格の計算の基礎になったその財産の価額です。小規模宅地等の特例を受けた財産を物納する場合は、特例を適用した後の価額になります。
物納申請を自分で取り下げた場合は、納期限または納付すべき日の翌日から延滞税がかかります(国税庁 No.4214)。
申請書は、税務署長に出します。延納・物納の申請期限は、納期限または納付すべき日です。申告の仕方で、次のように変わります(国税庁 No.4211)。
延納申請期限
| 申告の仕方 | 延納申請期限 |
|---|---|
| 期限内申告 | 申告期限 |
| 更正または決定 | 通知が発せられた日の翌日から起算して1か月を経過する日 |
| 期限後申告または修正申告 | 申告書を出した日 |
物納も、納期限または納付すべき日までに、物納申請書に物納手続関係書類を添付して出します(国税庁 No.4214)。
書類は、延納なら延納申請書に担保提供関係書類を添付します。国税庁の手引では、延納申請書の別紙として「金銭納付を困難とする理由書」を作成します。申請期限までに書類がそろわないときは、期限を延ばす届出があります。
申請書を出したあと、税務署長は、要件の調査をして、延納申請期限(物納申請期限)から3か月以内に許可または却下をします。審査が長引く場合の延長は、延納が最長6か月まで、物納が最長9か月までです。
手続の詳細は、国税庁の「相続税・贈与税の延納の手引」と物納の手引があります。一般的な取扱いは国税庁の電話相談センターで確かめられ、個別の事情を踏まえた進め方は税理士に相談する方法があります。窓口ごとの違いは相続の税理士に無料相談する方法にまとめました。払えないときの全体像は相続税が払えないとどうなるにあります。
認められません。要件をすべて満たす場合に申請でき、税務署長が調査をして、許可または却下をします(国税庁 No.4211)。
延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下なら、担保は要りません。それ以外は、延納税額と利子税の額に相当する担保を出します。
物納は、延納によっても金銭で納付することが困難な事由がある場合の制度です(国税庁 No.4214)。延納で払える見込みがあるときは、物納の要件を満たしません。物納の申請が「延納によっても困難とはいえない」として却下されたときは、延納の申請に移れます。
不動産等の割合や財産の区分で決まります。令和8年は、不動産等に係る税額で年0.6%、動産等に係る税額で年0.9%、一般の延納相続税額で年1.0%などです(国税庁 No.4211。割合は毎年変わります)。
申告期限から10年以内に限り、分納期限が来ていない税額について、物納に変更できます(特定物納)。
原則として、相続税の課税価格の計算の基礎になったその財産の価額です。小規模宅地等の特例を受けた財産は、特例を適用した後の価額です(国税庁 No.4214)。
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