被相続人が住んでいた自宅の土地や事業に使っていた土地を相続する場合、 「小規模宅地等の特例」を使えば土地の相続税評価額を最大80%減額できます。 都市部の自宅を相続する場合、この特例の適用の有無が相続税の有無を左右することも少なくありません。 適用条件・手続き・注意点を詳しく解説します。
小規模宅地等の特例(措法69条の4)は、被相続人が生前に住んでいた土地や事業に使っていた土地を 相続人が相続する場合に、その土地の相続税評価額を大幅に減額できる制度です。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
この特例が設けられている背景には、「被相続人の自宅や事業用地を相続しても、 相続税を納めるために売却しなければならない事態を防ぐ」という政策的な配慮があります。 特に東京・大阪などの都市部では土地の評価額が高くなりやすく、 この特例がなければ相続税の支払いのために自宅を売却しなければならないケースが生じてしまいます。
上限面積:330㎡
被相続人が住んでいた自宅(または生計を一にしていた親族が住んでいた自宅)の土地。 配偶者・同居の親族・家なき子(一定条件を満たす非同居の親族)が相続する場合に適用可能。
上限面積:400㎡
被相続人が事業(農業以外)に使用していた土地。 相続した相続人が申告期限まで事業を継続し、かつ土地を保有し続けていることが条件。 不動産貸付業は対象外。
上限面積:200㎡
被相続人が賃貸アパート・駐車場など不動産貸付業に使用していた土地。 減額割合は50%(他の2種類より低い)。 相続後も賃貸事業を継続していることが条件。
最もよく使われる「特定居住用宅地等(自宅の土地)」について、 誰が相続するかによって適用条件が異なります。
被相続人の配偶者が自宅の土地を相続する場合は、 無条件で特例が適用されます。 申告期限後に売却しても特例は維持されます。
被相続人と同居していた親族(子など)が相続する場合、 以下の条件をすべて満たす必要があります。
被相続人と同居していない親族でも、以下の条件をすべて満たす場合に特例が使えます。 これを「家なき子特例」と呼びます。
小規模宅地等の特例を適用するには、相続税申告書に以下の書類を添付します。
| 書類名 | 主な取得先 |
|---|---|
| 相続税申告書(第11・11の2表) | 税務署・国税庁Webサイト |
| 戸籍謄本(被相続人・相続人の続柄を証明) | 市区町村役場 |
| 遺産分割協議書(相続人の実印付) | 自作または司法書士作成 |
| 住民票の除票(被相続人の最後の住所) | 市区町村役場 |
| 相続人の住民票(同居を証明する場合) | 市区町村役場 |
| 登記事項証明書(土地・建物) | 法務局 |
| 家なき子の場合:賃貸借契約書・登記情報など | 各所 |
前提条件
被相続人:都内一戸建て(土地200㎡)に居住
土地の相続税評価額(路線価):8,000万円
相続人:配偶者・子1人(計2人)
配偶者が自宅の土地を相続し、小規模宅地等の特例を適用
| 土地の相続税評価額 | 8,000万円 |
| 適用上限面積 | 330㎡(200㎡は全て上限以内) |
| 減額割合 | 80% |
| 特例適用後の評価額 | 8,000万円 × (1 - 80%) = 1,600万円 |
| 減額された金額 | 8,000万円 - 1,600万円 = 6,400万円 |
土地の評価額が8,000万円から1,600万円に大幅減額され、 6,400万円分が課税の対象外になります。 この特例がない場合と比べると、大幅な節税効果があることがわかります。
この土地以外に預貯金等が2,000万円ある場合でも、 課税価格の合計は1,600万円(土地)+ 2,000万円(その他)= 3,600万円となり、 法定相続人2人の基礎控除4,200万円を下回るため相続税ゼロになります。 特例なしでは課税価格10,000万円 - 基礎控除4,200万円 = 5,800万円に課税され、 多額の相続税が発生していたことになります。
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