本記事はアフィリエイト広告(PR)を含みます。掲載しているサービスの情報は2026年10月28日時点で公式サイトから確認したものです。最新の内容は公式サイトをご確認ください。
「認知症と診断された」だけで、家族信託ができなくなるとは決まっていません。家族信託の信託契約は契約なので、結ぶ時点で本人に意思能力が必要です。意思能力がなければ契約は無効になり(民法第3条の2)、公証人も公正証書を作れません(公証人法第26条)。厚生労働省のガイドラインは、意思決定能力は「あるかないかという二者択一的ではなく」、行為の内容によっても変わると説明しています。この記事では、判断能力を誰がどう確かめるか、親の状態別に何から確かめるか、家族信託ができないときに残る制度、相談の前に用意するものを順に整理します。
診断名だけでは決まりません。家族信託は、委託者(親)が受託者(子など)に財産を渡し、一定の目的に従って管理や処分をしてもらう契約です(信託法第3条第1号)。信託は、この契約を結んだ時に効力が生じます(第4条第1項)。そのため、契約を結ぶ時点で、親が契約の中身を理解して意思を示せるかどうかが問われます。
契約の時点の判断能力に関わる4つの根拠
| 根拠 | 書かれていること |
|---|---|
| 民法第3条の2 | 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。 |
| 公証人法第26条 | 公証人は、法令に違反する事項、無効な行為及び行為能力の制限によって取り消すことができる行為について、公正証書を作成することができない。 |
| 厚生労働省 意思決定支援ガイドライン(平成30年6月) | 認知症の症状にかかわらず、本人には意思があり、意思決定能力を有するということを前提にして、意思決定支援をする。 |
| 同ガイドラインの脚注 | 本人の意思決定能力は行為内容により相対的に判断される。意思決定能力は、あるかないかという二者択一的ではなく(連続量)、段階的・漸次的に低減・喪失されていく。認知症の状態だけではなく、さまざまな状態によって変化する。 |
条文は e-Gov、ガイドラインは厚生労働省の原文で、2026年10月28日に確認しました。出典は末尾にあります。
この4つを合わせると、次のように整理できます(筆者の整理です)。契約の時点で意思能力があれば、診断を受けていても契約が成り立つ場合があります。意思能力がなければ、契約は無効で、公証人も公正証書を作れません。どちらになるかは診断名ではなく、その時点の本人の状態で個別に決まります。
日本公証人連合会は、任意後見契約について「認知症により本人の判断能力が既にやや低下しているのですが、契約を締結できますか」という質問に、次のように答えています。「もちろん本人の判断能力がなければ、任意後見契約は締結できません。しかし、認知症であるからといって直ちに判断能力が欠けていると評価されるわけではありません。」そのうえで、「結局のところ、公証人において、委任者本人や関係者からの説明、医師の診断等を参考に個別に判断能力の有無を判断し、公正証書が作成できるかどうかを決めることになります」としています。
公証事務のQ&Aには、任意後見や遺言信託のように、公証人が委任者本人の判断能力と契約意思を確認する必要がある契約では、委任者の代理は原則として認められない、とも書かれています。ここで挙げられているのは任意後見と遺言信託ですが、本人の判断能力と契約意思の確認が前提という考え方は、家族信託の契約書を公正証書にするときも同じだと考えられます(筆者の整理です)。
厚生労働省のガイドラインは、意思決定能力が次の4つの力で構成されるとしています。
意思決定能力を構成する4つの力と、家族信託の場面での例
| 力(ガイドラインの表現) | 家族信託の契約での例(筆者の例) |
|---|---|
| 理解する力:説明の内容をどの程度理解しているか | 「自宅と預貯金を、長男に管理してもらう契約」だと分かる |
| 認識する力:それを自分のこととして認識しているか | 自分の家と預金の話だと分かっている |
| 論理的に考える力:論理的な判断ができるか | 管理を任せる理由や、任せたあとの暮らしを考えられる |
| 選択を表明できる力:その意思を表明できるか | 「長男に任せたい」と自分の言葉で伝えられる |
左の列はガイドラインの記述で、右の列は家族信託に当てはめた筆者の例です。公的な判定基準ではありません。
ガイドラインは、意思決定能力の評価判定は、本人の認知機能や身体及び精神の状態を的確に示す情報と、本人の生活状況等に関する情報が適切に提供されることで、十分な判断資料に基づいて行う必要があるとしています。診断書や、直近の受診記録、普段の会話の様子を相談先に伝えておくと、判断の材料になります(筆者の整理です)。
判断能力は連続的に変わるため(上のガイドライン)、状態の分け方は目安です。親がどの段階にあるかで、先に確かめることが変わります(筆者の整理です)。
親の状態別の目安
| 親の状態 | 家族信託 | 先に確かめること |
|---|---|---|
| 物忘れはあるが、契約の内容を説明すれば理解して答えられる | 契約の時点で意思能力があれば、結べる場合があります | 早めに専門家へ相談し、契約書の案と財産の一覧を作る |
| 認知症の診断を受けている。日によって、話題によって理解に差がある | 個別の判断になります。公証人は本人や関係者の説明、医師の診断等を参考に判断します | 診断書、直近の受診記録、普段の様子を伝えて、結べるかを相談する |
| 説明をしても内容を理解できない、自分の意思を示せない | 意思能力がなければ契約は無効で、公証人も公正証書を作れません | 家庭裁判所への法定後見(後見・保佐・補助)の申立てを検討する |
1行目と2行目は、家族信託を使えるかどうかを専門家と確かめる段階です。3行目で、裁判所は後見開始の審判を「精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)によって判断能力が欠けているのが通常の状態の方(本人)を保護するための手続」と説明しています。
家族信託を結べる場合の費用は、家族信託の費用の相場で、公証人手数料と登録免許税の原文から計算しています。
判断能力が不十分になったあとに使える制度は、家庭裁判所が成年後見人等を選ぶ法定後見です。裁判所は3つの区分を次のように説明しています。
法定後見の3つの区分(裁判所)
| 区分 | 対象となる方 | 本人の権利を守る人 |
|---|---|---|
| 補助 | 判断能力が不十分な方 | 補助人 |
| 保佐 | 判断能力が著しく不十分な方 | 保佐人 |
| 後見 | 判断能力が欠けているのが通常の状態の方 | 成年後見人 |
申立てから審判まではおおむね1か月から2か月程度で、鑑定をする場合はさらに期間が必要です。申立書に候補者を書いても、その人が必ず選ばれるわけではなく、弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選ばれることもあります。最高裁判所の令和7年の概況では、後見開始と同時に選任された成年後見人等のうち、親族が16.4%、親族以外が83.6%でした。後見人等の報酬は家庭裁判所が決め、本人の財産から支払われます。
利用が続く期間について、裁判所のQ&Aは「本人が病気などから回復し判断能力を取り戻すか、本人が亡くなるまで続きます」と書いています。申立てのきっかけになった目的(保険金の受領や遺産分割など)を果たしたら終わり、という制度ではありません。
任意後見は、判断能力が十分なうちに、公正証書で任意後見契約を結んでおく制度です。本人の判断能力が不十分になり、家庭裁判所が任意後見監督人を選んだ時から契約の効力が生じます。判断能力がやや低下している場合に結べるかは、上の公証人の個別の判断になります。違いの詳細は認知症対策の家族信託と成年後見で比べています。
全国銀行協会が2021年2月18日に公表した考え方は、「銀行の預金は基本的には本人の資産であり、預金を払い出す場合には預金者本人の意思確認が必要となるため、家族といえども預金者の預金を払い出すことはできない」と書いています。認知判断能力が低下した顧客との取引では、補助人・保佐人の同意を確認するか、成年後見人や任意後見人を介して代理取引を行うのが一般的とされています。
同じ資料は、認知判断能力が低下した本人との取引では、親族等に成年後見制度などの利用を促すのが一般的で、やむを得ず取引する場合は本人のための費用の支払いであることを確認するなどして対応することが望ましい、としています。この考え方は会員各行の参考であり、一律の対応を求めるものではないとも注記されています。口座の扱いは銀行ごとに違うため、取引のある銀行に確かめてください。
親名義の実家を売る場合は、親が契約できなければ、成年後見人が家庭裁判所の許可を得て売る手順になります。手順と、元気なうちにできる備えは親が認知症になる前に実家を売れるようにするにはにまとめています。
家族信託の契約の当事者は親本人です。相談の前に、次の4つを家族で用意しておくと、結べるかどうかの確認が早く進みます(筆者の整理です)。
診断書があるだけで結べなくなるとは、民法・公証人法・厚生労働省のガイドラインのどれにも書かれていません。契約の時点で本人に意思能力があるかが問われ、公証人連合会は、本人や関係者の説明、医師の診断等を参考に公証人が個別に判断すると説明しています。
公証人連合会は、任意後見や遺言信託のように本人の判断能力と契約意思を確認する必要がある契約では、委任者の代理は原則として認められないと説明しています。家族信託でも、親本人が自分の意思で契約する点は同じだと考えられます。
親が契約できない状態なら、成年後見人が家庭裁判所の許可を得て売る手順になります(民法第859条の3)。許可を得ないで処分すると、その処分は無効になると裁判所は説明しています。手順は実家を売れるようにする方法で確かめられます。
信託は契約を結ぶと効力が生じ(信託法第4条第1項)、受託者は信託財産の管理又は処分などの権限を持ちます(第26条)。親が判断能力を失ったあとの変更や終了の扱いは、契約書の定めで変わります。契約書をどう定めるかは、結ぶ前に専門家と確かめます。
「おやとこ」の公式ページ(2026年10月28日確認)には、家族の状況を聞いたうえで、家族信託が必要か、どのような信託が合うか、ほかの制度は使えないか、費用がどれくらいかかるかを説明すると書かれています。相談料・着手金はいただかないと案内されています。
親の財産にかかる相続税は、先に計算機で確かめられます
相続税を無料で計算する →