相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」です
手続き 2026年7月 読了 約9分

相続した自動車・上場株式の名義変更手続きと必要書類

相続財産の中でも、預貯金や不動産に比べて手続きを後回しにしがちなのが自動車と株式です。 しかし名義変更をしないままでは売却や証券の管理ができず、放置するほど手続きが複雑になります。 この記事では、自動車の移転登録(運輸支局)と上場株式の相続手続き(証券会社)の具体的な流れ・必要書類を解説します。財産の種類ごとに手続き先が異なる点を踏まえて、順序立てて進めていきましょう。

1. 自動車の名義変更が必要な理由

車検証の「所有者の氏名又は名称」に記載されている人が死亡した場合、その自動車を相続する手続き(移転登録)が必要になります。 車検証上の所有者が第三者(ディーラーのローン会社など)になっている場合は、そもそも相続の対象にはなりません。まずは車検証で所有者名義を確認することが最初のステップです。

相続人の順位:自動車の相続手続きにおける相続人の考え方は、民法の一般的な相続人の順位(第1順位:子、第2順位:父母、第3順位:兄弟姉妹、配偶者はいずれの場合も相続人)と同じです。養子縁組による養親・養子も相続の順位に従って相続人となります。

相続放棄をした人がいる場合、その人は相続人としての権利義務を最初から持たなかったものとして扱われるため、自動車の相続手続きにおいても相続人には含まれません。相続放棄と相続人の範囲の考え方は、他の相続財産の手続きとも共通しています。

2. 自動車の名義変更に必要な書類

普通自動車の名義変更(移転登録)は、被相続人の住所地を管轄する運輸支局・自動車検査登録事務所で行います。一般的に必要とされる書類は次のとおりです。

自動車の相続による名義変更の主な必要書類

申請書(OCR申請書 第1号様式)運輸支局窓口で入手
自動車検査証(車検証)被相続人が所有していた車の車検証
戸籍謄本など被相続人と相続人の関係を証明する書類
遺産分割協議書または遺言書誰がその車を相続するかを証明する書類
新所有者の印鑑証明書発行から3か月以内のもの
自動車保管場所証明書(車庫証明)警察署で申請、発行まで通常3〜7日程度

相続放棄をした人がいる場合は、家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理証明書」の原本と写しが必要です。相続放棄については「相続放棄すべき?借金がある相続の判断基準」も参考にしてください。

3. 単独相続・共同相続・第三者への名義変更

自動車の相続手続きには、状況に応じていくつかのパターンがあります。

未成年者が相続人に含まれる場合:相続人に未成年者が含まれており、その親が同時に相続人になっている(親権者と未成年者の利益が対立する)場合は、特別代理人の選任が必要になることがあります。特別代理人の選任は家庭裁判所への申立てが必要です。詳しくは「未成年の相続人がいる場合の特別代理人制度」も参考にしてください。

4. 上場株式の相続手続きの流れ

上場株式は、被相続人が取引していた証券会社に開設された証券口座で管理されています。相続人が直接その口座から株式を移すことはできず、次のような流れで手続きします。

  1. 被相続人が証券口座を持っていた証券会社を特定する(郵送物・取引報告書などで確認)
  2. 証券会社に死亡の事実を連絡し、残高証明書の発行を依頼する
  3. 相続人が新たに証券口座を開設する(同じ銘柄の株式を直接引き継ぐには、相続人名義の口座が必要)
  4. 遺産分割協議書などに基づき、被相続人の口座から相続人の口座へ株式を移管する

株式の評価方法については「相続した株・投資信託・国債の評価方法と相続税の計算方法」で詳しく解説しています。上場株式は死亡日の終値など4つの株価のうち最も低い金額で評価するのが基本です。

5. 証券会社での必要書類

上場株式の相続手続きで一般的に必要とされる書類

被相続人の死亡が確認できる書類死亡診断書のコピーまたは戸籍謄本(除籍)
被相続人と相続人の関係を証明する戸籍謄本法定相続情報一覧図でも代用可能な場合が多い
遺産分割協議書または遺言書誰がその株式を取得するかを証明する書類
相続人全員の印鑑証明書証券会社所定の依頼書に押印が必要な場合が多い
相続人名義の証券口座同じ証券会社に口座がない場合は新規開設が必要

証券会社ごとに必要書類の詳細や書式が異なるため、事前にコールセンターや窓口へ確認することをおすすめします。

6. 放置するリスクと注意点

自動車の相続税評価額は、原則として売買実例価額(中古車市場での取引価格)や、専門書等に掲載されている中古車の販売価格などを基に評価します。年式が古く市場価値がほとんどない車であれば少額の評価にとどまることが多いですが、高級車・輸入車などは無視できない金額になる場合もあるため、名義変更の手続きと合わせて評価額の把握もしておくとよいでしょう。

預貯金の相続手続きについては「相続した預金口座の凍結解除と払い戻し手続き」も参考にしてください。財産の種類ごとに手続き先が異なるため、財産目録を作成して一つずつ対応していくのが確実です。

軽自動車・バイクの名義変更は手続きが異なる

普通自動車は運輸支局・自動車検査登録事務所で手続きしますが、軽自動車は「軽自動車検査協会」、バイク(原動機付自転車・軽二輪など)は排気量に応じて市区町村役場や運輸支局など手続き先が異なります。

車両の種類別・手続き窓口の違い

車両の種類主な手続き窓口
普通自動車運輸支局・自動車検査登録事務所
軽自動車軽自動車検査協会
原動機付自転車(125cc以下)市区町村役場
軽二輪・小型二輪(126cc以上)運輸支局

車両の種類によって必要書類や窓口が変わるため、車検証や標識交付証明書の種類を確認したうえで、事前に管轄窓口へ問い合わせておくとスムーズに進められます。

よくある質問

Q. 車検証の有効期間が切れている車を相続した場合、名義変更はできますか?

A. できますが、手順が少し異なります。すぐに自動車を使用する場合は、車検を受けてから名義変更の手続きを行う必要があります。すぐに使用しない場合は、いったん「一時抹消登録」の手続きをしておき、実際に使用する段階で中古新規登録の手続きをする流れになります。有効期間が切れたまま第三者に名義変更する場合は、一時抹消登録の手続きをしてから所有者変更記録の手続きを行います。事前に運輸支局に確認するのが確実です。

Q. 上場株式の名義変更に相続税の申告は必要ですか?

A. 名義変更の手続き自体は証券会社での手続きであり、相続税の申告手続きとは別物です。ただし、名義変更(相続手続き)をするかどうかにかかわらず、被相続人が死亡した時点で所有していた上場株式は相続税の課税対象になります。相続税の申告が必要な場合は、証券会社から取得する残高証明書に基づいて評価額を計算し、申告書に記載する必要があります。名義変更の手続きと相続税の申告は並行して進めるのが一般的です。相続税の申告期限(10か月)を意識して、証券会社への連絡は早めに行いましょう。

Q. 自動車の名義変更を放置するとどうなりますか?

A. 法律上の罰則が直接あるわけではありませんが、名義変更をしないまま放置すると、その車を売却・廃車・保険の変更ができなくなるなど実務上の不都合が生じます。また、相続人が複数いる状態で名義変更を先延ばしにすると、後になって相続人の一人が認知症になったり死亡したりして、手続きに必要な同意を得ることがより困難になるケースもあります。車検証の名義と実際の使用者が異なる状態が続くと、事故時の責任関係も複雑になるため、早めの手続きをおすすめします。

自動車や株式は少額の財産と思われがちですが、名義変更を放置すると後々の手続きがどんどん複雑になります。相続財産の調査時にリストアップしておき、他の財産と並行して早めに手続きを進めることをおすすめします。窓口や必要書類が財産の種類ごとに異なる点も踏まえ、事前の確認を徹底すると手続きがスムーズです。相続人が複数いる場合は、誰がどの手続きを担当するかを最初に決めておくと、全体の進行が滞りにくくなります。不明点があれば、各窓口のサポート担当者に早めに問い合わせることも有効な進め方です。

参考・出典

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