相続人の中に未成年者がいる場合、通常の遺産分割協議とは異なる手続きが必要になります。 未成年者は自ら法律行為(遺産分割協議への参加)ができないため、 代わりに判断する「特別代理人」の選任を家庭裁判所に申し立てなければなりません。 この記事で手順を詳しく解説します。
民法上、未成年者(18歳未満)は「制限行為能力者」として、 法律行為(契約・協議への合意など)を単独で行う能力が制限されています。 遺産分割協議も法律行為であるため、未成年者だけでは有効に参加できません。 最高裁判所の司法統計によると、相続放棄の申述受理件数は年間26万件前後で推移しており、近年増加傾向にあります。
通常、未成年者の法律行為は親権者(父母)が代理します。 しかし相続の場面では、親も相続人になることが多く、 そのまま親が代理すると問題が生じます。
たとえば夫が死亡し、相続人が妻・子(未成年)の場合、 妻が子を代理して遺産分割協議に参加すると、 「妻の取り分を多くするために子の取り分を減らす」ことができてしまいます。 これが利益相反の問題です。
民法826条は「親権者と未成年者の利益が相反する行為」については 親権者が代理できないと定め、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらうよう求めています。
特別代理人の候補者は申立書に記載しますが、家庭裁判所が選任の可否を判断します。 候補者として認められやすい人の例は以下のとおりです。
候補者が相続人である場合や未成年者と利益相反関係にある場合は認められません。 適切な候補者がいない場合は弁護士などの専門家を候補者とすることも可能ですが、 費用が発生します(10〜20万円程度)。
特別代理人選任申立の必要書類
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 特別代理人選任申立書 | 家庭裁判所書式(A4) |
| 未成年者の戸籍謄本 | 発行後3か月以内 |
| 親権者の戸籍謄本 | 同上 |
| 特別代理人候補者の戸籍謄本・住民票 | 同上 |
| 遺産分割協議書案 | 分割内容の詳細が必要 |
| 被相続人の戸籍謄本(全部) | 出生〜死亡まで |
申立費用は、収入印紙800円(未成年者1人につき)と郵便切手代(数百円程度)です。 弁護士・司法書士に申立書作成を依頼する場合は別途費用がかかります。
「未成年者に代わって判断する制度」として成年後見制度と混同されることがありますが、 両者は異なります。
特別代理人と成年後見人の比較
| 項目 | 特別代理人 | 成年後見人 |
|---|---|---|
| 対象者 | 未成年者(18歳未満) | 判断能力が低下した成年 |
| 設置のきっかけ | 特定の法律行為(遺産分割など) | 継続的な判断能力の低下 |
| 権限の範囲 | 申立で指定した特定行為のみ | 財産管理全般 |
| 期間 | 当該行為完了で終了 | 継続(取消まで) |
| 費用 | 低い(申立費用のみ) | 高い(継続的な報酬) |
特別代理人は「この遺産分割協議のみ」のために選任される一時的なものです。 未成年者が成年に達した後は、通常の相続人として自ら判断・行為できます。
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