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代償金を、遺産分割協議で決めた代償債務の履行として払うなら、相続税の課税価格の計算で扱います(相続税法基本通達11の2-9)。贈与税が問題になるのは、対価を支払わないで、または著しく低い価額の対価で利益を受けたときに、贈与により取得したものとみなす相続税法第9条に当たる場合です。また、代償金の代わりに、相続人自身の不動産などの資産を渡すと、渡した人はその履行の時の価額で資産を譲渡したことになり、所得税(譲渡所得)がかかります(所得税基本通達33-1の5、国税庁 No.4173)。この記事では、どんなときにどの税金が問題になるか、協議書に何を書いておくかを、国税庁と e-Gov の原文で整理します。代償金の相続税の計算は代償分割の相続税は?にあります。
代償金のやり取りは、次の4つの場面で、課税のされ方が違います。
代償金のやり取りと、課税のされ方
| 場面 | 課税のされ方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 協議で決めた代償債務を、現金で払う | 相続税の課税価格の計算で扱う。払う人は現物の財産の価額から代償財産の価額を引き、受け取る人は足す | 相続税法基本通達11の2-9、国税庁 No.4173 |
| 代償債務の履行として、自分の不動産などの資産を渡す | 渡した人は、履行の時の価額で資産を譲渡したことになり、譲渡所得が出る。受け取った人は、履行の時の価額で資産を取得したことになる | 所得税基本通達33-1の5・38-7、国税庁 No.4173 |
| 対価を支払わないで、または著しく低い価額の対価で利益を受けた | 利益を受けた人が、利益を受けさせた人から贈与により取得したものとみなして、贈与税の対象になる | 相続税法第9条、国税庁 No.4402 |
| 売るために1人の名義で相続登記をし、売却代金を分配する | 名義が換価のための便宜で、代金が分割の内容どおり実際に分配されるなら、贈与税の問題にならない | 国税庁 質疑応答事例(相続税・贈与税) |
質疑応答事例は、照会の事実関係を前提にした一般的な回答で、具体的な取引では異なる課税関係になることがあると国税庁が注記しています。
自分に近い行から見てください。右の列は、そのあとに読む節や記事です。
状況ごとの、先に確かめること
| あなたの状況 | 先に確かめること | 次に読むもの |
|---|---|---|
| 協議書に代償金の額と期限を書き、現金で払う | 相続税の課税価格の計算と、申告書の付表4への書き方 | 代償分割の相続税は? |
| 協議書に代償分割と書いていない、口約束で払った・払う予定 | 利益を受けたことの対価があるかどうか | 「協議書に代償分割と書いていないとき」の節 |
| 代償金の代わりに、自分の土地や建物を渡したい | 譲渡所得の税金と、受け取る人の取得の扱い | 「代償金の代わりに不動産などを渡すとき」の節 |
| 代償金のために、相続した実家を売りたい | 売った人に出る譲渡所得と、使える特例 | 代償金を払えないときは?、相続した実家を売却すると税金はいくら? |
| 売るために、1人の名義で相続登記をしたい | 売却代金を分割の内容どおり分けるかどうか | 上の表の4行目、換価分割の節 |
| 協議書を作る | 代償債務の額・払う人と受け取る人・期限と方法 | 「協議書には、何を書いておきますか」の節 |
通達は、代償分割を「その現物を取得した者が、他の共同相続人に対して債務を負担する分割の方法」と定義しています(11の2-9の注)。代償債務の負担が協議書などの書面に残っていないと、お金のやり取りが、代償債務の履行なのか、対価のない利益なのかを、書面から確かめられません。
相続税法第9条は、対価を支払わないで、または著しく低い価額の対価で利益を受けた場合に、利益を受けた時に、その利益の価額に相当する金額を、利益を受けさせた者から贈与により取得したものとみなすと定めています。贈与とみなされた場合の贈与税は、暦年課税なら、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除110万円を引いた残りにかかります(国税庁 No.4402)。
確かめた範囲では、国税庁が「協議書に書かないと贈与税がかかる」と述べた文書は見つかりませんでした。国税庁の通達・タックスアンサー・質疑応答事例の原文で確かめられたのは、代償分割が債務の負担を前提とした分割の方法であることと、第9条の定めです。書面がないと、第9条に当たるかを判断する場面が出る、という整理になります。代償金の額・払う人・受け取る人は、協議の段階で書面にしておくと、あとで説明しやすくなります。
所得税基本通達33-1の5は、代償分割により負担した債務が資産の移転を要するものである場合に、その履行として資産を移転したときは、履行をした者が、その履行をした時の価額で、その資産を譲渡したことになると定めています。国税庁のタックスアンサー No.4173 も、代償財産として交付する財産が相続人固有の不動産の場合は、履行した人に所得税が課税され、不動産を取得した人は、履行があった時の時価でその資産を取得したことになる、と説明しています。
代償金の代わりに、自分の不動産を渡した場合
| 立場 | 税金の扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 渡した人 | 履行の時の価額が収入金額になり、そこから取得費と譲渡費用を引いた譲渡所得の税金が出る | 所得税基本通達33-1の5、国税庁 No.3202 |
| 受け取った人 | 履行があった時の価額で、その資産を取得したことになる | 所得税基本通達38-7(2) |
たとえば、代償債務2,000万円の履行として、取得費800万円の自分の土地(履行の時の価額2,000万円)を渡した場合、譲渡所得の金額は 2,000万円−800万円=1,200万円です(譲渡費用や特別控除は考えない場合)。税率は所有期間で変わります。計算は相続した実家を売却すると税金はいくら?の考え方と同じです。
代償金を現金で払うなら、この譲渡所得の問題は出ません。ただし、現金を用意するために別の不動産を売るなら、その売却に譲渡所得が出ます。
協議は相続人全員で行い、成立したときは遺産分割協議書を作ります(民法第907条第1項、国税庁 No.4202)。代償分割では、次の項目を書いておくと、相続税の申告や税金の説明で確かめやすくなります。
代償分割の協議書に書いておく項目
| 項目 | 書く内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 現物を取得する人と財産 | 誰が、どの不動産を取得するか(所在・地番・家屋番号など) | 現物を取得した人が債務を負担するのが代償分割(通達11の2-9の注) |
| 代償債務の額 | 「金○○円」と数字で書く | 相続税の代償財産の価額の基になる(通達11の2-10) |
| 払う人と受け取る人 | 氏名と、受け取る人が複数なら1人ごとの額 | 付表4に、1人ごとに書くため |
| 支払期限と方法 | 「令和○年○月○日までに、○○が指定する口座に振り込む」など。分割なら、回数と各回の額・日付 | 払う側と受け取る側の食い違いを防ぐ |
| 署名と押印 | 相続人全員の署名と押印 | 協議は相続人全員で行うため |
この表は、通達と国税庁の文書から、あとで確かめる必要が出る項目を選んだものです。書き方の様式を定めた国税庁の文書は、確かめた範囲では見つかりませんでした。
書き方の全体は遺産分割協議書の書き方・作成手順と必要な署名・押印のルール、代償金の払い方で話がつかないときは代償金を払えないときは?にあります。
協議で決めた代償債務の履行として代償金を払うなら、相続税の課税価格の計算で扱います(相続税法基本通達11の2-9)。贈与税が問題になるのは、対価を支払わないで、または著しく低い価額の対価で利益を受けた場合に当たるときです(相続税法第9条)。
暦年課税なら、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から基礎控除110万円を引いた残りにかかります。合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません(国税庁 No.4402)。
代償分割は、現物を取得した人が債務を負担する分割の方法です(通達11の2-9の注)。債務の負担が書面にないと、お金のやり取りが代償債務の履行かを確かめにくくなります。「書かないと贈与になる」と述べた国税庁の文書は、確かめた範囲では見つかりませんでした。
渡した人は、履行の時の価額で資産を譲渡したことになり、譲渡所得の税金が出ます(所得税基本通達33-1の5)。受け取った人は、履行があった時の価額でその資産を取得したことになります(同38-7(2))。
現金で払う場合は、代償債務の履行として資産を移転するわけではないので、通達33-1の5の場面ではありません。ただし、現金を用意するために別の不動産を売れば、その売却に譲渡所得が出ます。
共同相続人の1人の名義で登記したのが換価のための便宜で、代金が分割の内容どおり実際に分配されるなら、贈与税の課税は問題になりません(国税庁 質疑応答事例)。
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