相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」です
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遺留分侵害額請求とは?時効・計算方法・請求の手順をわかりやすく解説

「全財産を長男に相続させる」といった遺言や、生前の偏った贈与によって最低限の取り分を侵害された場合、 他の相続人は「遺留分侵害額請求」によって金銭の支払いを求めることができます。 ただし請求には1年の時効があり、計算方法も複雑です。この記事では遺留分侵害額請求の仕組みを具体例で解説します。

1. 遺留分侵害額請求とは

遺留分とは、配偶者・子・直系尊属(親・祖父母)に法律上保障された最低限の遺産の取り分です。 被相続人は遺言によって財産の分け方を自由に決められますが、この遺留分を侵害するような遺言・生前贈与があった場合、 侵害された相続人は、財産を多く受け取った人(受遺者・受贈者)に対して金銭の支払いを請求できます。 これを民法1046条に基づく「遺留分侵害額請求」といいます。

2019年7月の民法改正で金銭請求に一本化:改正前は「遺留分減殺請求」として財産そのものの返還(共有化)を求める制度でしたが、 改正後は金銭の支払いのみを請求する制度に変わりました。不動産や会社の株式が共有状態になるトラブルを避けられるようになっています。 改正前に発生した相続(2019年7月1日より前に開始した相続)には、なお旧制度(遺留分減殺請求)が適用されるため、 古い相続案件を扱う場合は適用される制度の違いに注意が必要です。

2. 遺留分の割合と対象者

遺留分が認められるのは配偶者・子(またはその代襲者)・直系尊属のみです。 兄弟姉妹には遺留分がありません(民法1042条)。

遺留分の割合

相続人の構成遺留分の合計割合
直系尊属(親・祖父母)のみが相続人の場合相続財産の1/3
それ以外の場合(配偶者・子がいる場合)相続財産の1/2

相続人が複数いる場合は、上記の割合に各自の法定相続分を乗じた割合が個別の遺留分になります。 たとえば配偶者と子2人が相続人の場合、遺留分の合計は1/2、配偶者の遺留分は1/2×1/2=1/4、子はそれぞれ1/2×1/4=1/8です。 法定相続分の基本的な考え方は「相続人の範囲と法定相続分の一覧」で解説しています。

3. 遺留分を算定するための財産の価額

遺留分の基礎となる財産は、被相続人が死亡時に持っていた財産だけではありません。 民法1043条・1044条により、一定範囲の生前贈与を加算し、債務を差し引いて算定します。

生前贈与の加算範囲

贈与を受けた人加算される期間
相続人以外の第三者相続開始前1年以内の贈与(当事者双方が遺留分侵害を知っていた場合は年数の制限なし)
相続人(婚姻・養子縁組のため、または生計の資本としての贈与に限る)相続開始前10年以内の贈与
注意:相続税の課税対象になる生前贈与の加算期間(暦年贈与の持ち戻し、令和8年12月31日以前の相続開始では原則3年以内)とは 別の制度です。遺留分の算定期間(相続人への贈与は10年)と相続税の加算期間は基準が異なるため混同しないよう注意してください。

4. 遺留分侵害額の計算方法

遺留分侵害額は、民法1046条2項の規定により、遺留分の額から遺留分権利者が既に得ている財産等を差し引き、 承継する債務額を加算して算定します。

遺留分侵害額 = 遺留分の額 −(遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益の額)−(遺留分権利者が取得すべき遺産の価額)+(遺留分権利者が承継する債務の額)

民法1046条2項に基づく計算式

具体例で確認しましょう。遺産総額8,000万円、相続人は子2人(長男・次男)、遺言で「全財産を長男に相続させる」とされていたケースです。

計算例(遺産8,000万円・子2人・全財産を長男へ遺贈)

項目金額
次男の遺留分(1/2 × 1/2)2,000万円
次男が遺贈・生前贈与で受け取った額0円
次男が長男に請求できる遺留分侵害額2,000万円

5. 請求の方法(内容証明・調停・訴訟)

遺留分侵害額請求は、まず相手方に対する意思表示だけで法的効果が生じます。裁判所への申立ては必須ではありません。 ただし後述する時効の関係で、請求した事実と日付を証拠として残す必要があるため、内容証明郵便で通知するのが一般的です。

  1. 内容証明郵便での請求:「遺留分侵害額として〇〇円を請求する」旨を明記し、配達証明付きで送付する
  2. 話し合い(示談):相手方が支払いに応じれば、支払方法・期限を合意書にまとめて解決する
  3. 家庭裁判所での調停:話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てる
  4. 地方裁判所での訴訟:調停でも解決しない場合、最終的に訴訟で金額を確定させる
相手が無資力の場合:受遺者・受贈者に支払い能力がない場合の損失は、遺留分権利者側の負担になります(民法1047条4項)。 早期に請求して回収可能性を確保することが重要です。

請求された側(支払う側)の対応

遺留分侵害額を一括で支払うことが難しい場合、支払う側は裁判所に対して支払いの期限の許与を求めることができます(民法1047条5項)。 不動産や自社株式など現金化しにくい財産を相続した場合に、まとまった金銭を用意できないケースは少なくありません。 分割払いの交渉や、支払い原資を確保するための不動産売却の検討など、早い段階で対応方針を決めることが重要です。

生命保険金は原則対象外

被相続人が受取人を指定して契約していた生命保険金は、受取人の固有の権利として取得するものであり、 原則として遺留分を算定するための財産には含まれません。ただし、保険金額が遺産総額や他の相続人の取得額と比べて 著しく大きく、実質的に贈与と同視できるような特別な事情がある場合は、判例上、特別受益に準じて 持ち戻しの対象と判断される可能性があります。生命保険を使った相続対策を検討する際は、 この点も踏まえて受取人・保険金額を設定することが望ましいでしょう。

6. 時効に注意(1年・10年)

遺留分侵害額請求権には、他の相続関連の権利より短い時効が設定されています(民法1048条)。

遺留分侵害額請求権の時効

起算点期間
相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時1年間
相続開始の時(知らなかった場合の上限)10年間

「知った時から1年」は、遺言の内容を知らされてから1年ということが多く、想像より短い期限です。 時効の完成を防ぐには、期限内に内容証明郵便などで請求の意思表示をしておく必要があります。 いったん請求の意思表示をすれば、その後の具体的な金額確定までに時間がかかっても時効は問題になりません。

なお、遺留分侵害額請求権自体は意思表示によって発生する金銭債権に転化するため、 いったん発生した金銭支払請求権については、通常の金銭債権の消滅時効(原則5年)が別途適用されます。 つまり「1年以内に請求の意思表示をする」ことと、「その後の具体的な金銭債権を行使する」ことは別の話であり、 両方の期限を意識しておく必要があります。請求の意思表示さえ済ませておけば、その後に相手方と交渉が長引いても 権利そのものが消滅する心配は基本的にありません。

遺留分の問題は遺言書作成時にも配慮すべき論点です。「遺言書の種類と書き方のポイント」でも 付言事項による争族防止の考え方を解説しています。

よくある質問

Q. 遺留分侵害額請求はいつまでできますか?

A. 民法1048条により、遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与・遺贈があったことを知った時から1年間で時効消滅します。また、相続開始の時から10年を経過した場合も同様に消滅します。1年の期限は遺言の内容を知った日から数えるため、想像より早く到来することが多く、早めの対応が必要です。

Q. 兄弟姉妹にも遺留分はありますか?

A. ありません。遺留分が認められるのは配偶者・子(代襲者を含む)・直系尊属(親・祖父母)のみです。民法1042条により兄弟姉妹には遺留分が保障されていないため、遺言で「全財産を長男に相続させる」とされていても、被相続人の兄弟姉妹は遺留分侵害額請求ができません。子がいない夫婦で兄弟姉妹に財産を渡したくない場合、配偶者への遺言はこの点で有効な対策になります。

Q. 生前に多額の贈与を受けていた相続人がいる場合はどうなりますか?

A. 遺留分を算定するための財産には、原則相続開始前1年以内の贈与を加算しますが、贈与を受けたのが相続人である場合は、婚姻・養子縁組のためまたは生計の資本として受けた贈与に限り、相続開始前10年以内まで遡って加算対象になります(民法1044条)。10年より前の贈与は原則として遺留分の算定対象外になる点も押さえておきましょう。

参考・出典

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