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節税対策 2026年7月 読了 約10分

非上場株式(自社株)の相続税評価と事業承継税制(法人版)の使い方

中小企業の経営者が亡くなると、その会社の株式(自社株)も相続税の対象になります。 非上場株式は市場価格がないため独自の方法で評価され、しかも事業を継続する会社ほど評価額が高くなりやすく、後継者の納税資金不足が問題になりがちです。 この記事では、非上場株式の評価の考え方と、納税を猶予・免除できる事業承継税制(法人版)の仕組みを解説します。制度の期限や適用条件を早めに把握し、後継者への引き継ぎを計画的に進めることが重要です。

1. 非上場株式(自社株)が相続税で問題になる理由

経営者が保有する自社の株式(取引相場のない株式)は、市場で売買されていないため、相続税を計算するために独自のルールで評価額を算出する必要があります。 問題は、業績の良い会社ほど評価額が高くなりやすいことです。会社の利益や純資産が積み上がるほど株式の評価額も上がり、後継者が引き継ぐ相続税額が大きくなります。

よくある問題:自社株の評価額が高額になっても、その株式は市場で売却できるものではありません。後継者は「会社の経営権は引き継いだが、株式を売って納税資金を作ることができない」という状況に陥りやすく、これが中小企業の事業承継における大きな課題になっています。

2. 評価方法の基本(類似業種比準方式・純資産価額方式)

取引相場のない株式は、その株式を取得した株主が会社の経営支配力を持つ「同族株主等」かどうかで評価方式が変わります。同族株主等が取得した場合は、原則的評価方式(会社の規模に応じた方式)で評価します。

会社規模別の原則的評価方式

会社規模評価方式考え方
大会社類似業種比準方式類似業種の上場会社の株価を基に、配当・利益・純資産の3要素で比準して評価
小会社純資産価額方式会社の総資産・負債を相続税評価に洗い替え、評価差額の法人税額等相当額を控除した金額で評価
中会社両方式の併用大会社・小会社の評価方法を一定の割合で組み合わせて評価

会社規模は、総資産価額・従業員数・取引金額(売上高)によって判定されます。どの会社規模に該当するかで評価額が大きく変わるため、決算書の内容を正確に反映させることが重要です。

特定の評価会社は純資産価額方式が中心

開業後3年未満の会社、土地保有割合が高い会社(土地保有特定会社)、株式等の保有割合が高い会社(株式等保有特定会社)などは、原則として純資産価額方式で評価することになっています。会社の実態に応じて評価方法が細かく分かれている点に注意が必要です。

3. 同族株主以外の株式(配当還元方式)

経営に関与しない少数株主(同族株主以外の株主)が取得した株式については、会社の規模にかかわらず、特例的な評価方式である「配当還元方式」で評価します。 配当還元方式は、その株式を所有することで受け取る1年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して株式の価額を評価する方法です。

評価額が下がりやすい:配当還元方式は原則的評価方式より低い評価額になることが多く、経営に関与しない少数株主にとっては税負担が軽くなります。ただし、後継者本人(経営を引き継ぐ同族株主)にはこの方式は使えないため、後継者の株式評価額を下げる目的には使えません。

4. 事業承継税制(法人版)とは

法人版事業承継税制は、後継者である相続人等が、都道府県知事の認定を受けている非上場会社の株式等を相続・遺贈により取得した場合に、その株式に係る相続税の納税を一定の要件のもとで猶予し、後継者の死亡等により納税が猶予されている相続税が最終的に免除される制度です。

評価額が高額になりがちな非上場株式について、納税資金の心配なく事業を引き継げるようにすることを目的としています。適用には都道府県への認定申請や、税務署への継続的な届出など、複数の手続きが必要です。

5. 特例措置と一般措置の違い

事業承継税制には「特例措置」と「一般措置」の2つの制度があります。特例措置は平成30年1月1日から令和9年12月31日までの相続等・贈与に適用される期間限定の制度で、一般措置より大幅に条件が有利です。

特例措置と一般措置の主な違い

項目特例措置一般措置
事前の計画策定特例承継計画の提出が必要(提出期限:令和8年3月31日まで)不要
対象株数全株式総株式数の最大3分の2まで
納税猶予割合100%相続等80%・贈与100%
承継パターン複数株主から最大3人の後継者複数株主から1人の後継者
雇用確保要件弾力化(一定の報告書提出で実質的に緩和)承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要
特例措置の期限に注意:特例措置の適用を受けるには、あらかじめ都道府県に「特例承継計画」を提出しておく必要があり、その提出期限は令和8年3月31日までです。この期限を過ぎると特例措置は使えなくなり、雇用確保要件などがより厳しい一般措置のみが対象になります。事業承継を検討している場合は、この期限を踏まえて早めに動く必要があります。

6. 事業承継税制のリスクと注意点

事業承継税制は強力な制度ですが、あくまで「納税の猶予」であり、免除が確定するまでは油断できません。 後継者が株式を譲渡した場合や、会社が解散した場合など、一定の取消事由に該当すると、猶予されていた相続税額に利子税を加えて一括で納付しなければなりません。 猶予が取り消されるタイミングは事業の状況によって様々であり、後継者が想定していないタイミングで多額の納税が発生するリスクがある点を十分に理解しておく必要があります。

長期間にわたって事業を継続する前提の制度であるため、将来の事業計画・後継者の意向を含めて、税理士や中小企業診断士など専門家と十分に相談してから選択することが重要です。

事業承継税制を使わない場合の代替策

事業承継税制の適用要件(都道府県の認定、雇用確保、継続届出など)が事業の実情に合わない場合は、無理に適用を目指さず、次のような代替策を組み合わせて検討することもできます。

早めの準備が重要:自社株の評価額は会社の業績によって毎年変動するため、対策を検討し始めてから実行までに時間がかかるほど、評価額がさらに上がってしまうリスクがあります。経営者が健在なうちから、税理士・中小企業診断士と一緒に長期的な承継計画を立てることが望まれます。

よくある質問

Q. 非上場株式の評価は自分で計算できますか?

A. 類似業種比準方式や純資産価額方式の計算は、会社の総資産・従業員数・取引金額による会社規模の判定、比準要素の算出など専門的な知識が必要で、自分だけで正確に計算するのは難しいのが実情です。国税庁の「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を使えば手順自体は示されていますが、決算書の内容を正しく反映させる必要があるため、税理士に依頼するのが一般的です。会社規模の判定を誤ると評価額が大きく変わることもあるため、特に注意が必要です。

Q. 事業承継税制の特例措置はもう使えませんか?

A. 特例措置の適用を受けるには、あらかじめ都道府県に「特例承継計画」を提出しておく必要があり、その提出期限は令和8年3月31日までとされています。この期限を過ぎると特例措置(納税猶予100%など)は原則として使えなくなり、雇用確保要件などがより厳しい一般措置のみが対象になります。期限や制度の詳細は国税庁・中小企業庁の最新情報を必ず確認してください。

Q. 事業承継税制を使うとどんなリスクがありますか?

A. 納税が猶予されるだけで、免除が確定するまでは相続税額そのものがなくなるわけではありません。後継者が株式を譲渡したり、会社が解散したりするなど一定の取消事由に該当すると、猶予されていた税額に利子税を加えて一括で納付しなければなりません。長期間にわたって事業を継続する前提の制度であるため、将来の事業計画を含めて税理士と十分に検討してから選択することが重要です。

非上場株式の評価と事業承継税制は制度が複雑で、判断を誤ると税負担や手続きに大きな影響が出ます。早い段階で税理士に相談し、会社の状況に合った方針を固めておくことをおすすめします。

参考・出典

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