ビットコインなどの暗号資産は、預金や不動産と同じく相続税の課税対象になります。 しかし現物がなく、パスワードや秘密鍵を知らなければ遺族が把握すらできないという特殊性があり、見落とされやすい財産の一つです。 この記事では、暗号資産の相続税評価の仕組み・取引所での手続き・見落としを防ぐポイントを解説します。生前のうちに家族と情報を共有しておくことが、遺族の負担を大きく減らします。
相続税法では、個人が金銭に見積もることができる経済的価値のある財産を相続・遺贈・贈与により取得した場合、相続税または贈与税の課税対象になるとされています。 暗号資産は資金決済法上「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されており、この経済的価値のある財産に該当するため、被相続人から暗号資産を相続・遺贈・贈与により取得した場合には相続税・贈与税が課税されます。
国税庁は暗号資産の税務上の取扱いについてFAQ形式で継続的に情報を公表しており、相続税・贈与税に関する取扱いも明記されています。制度が比較的新しい分野であるため、最新の情報を確認しながら対応することが望ましいです。
財産評価基本通達には暗号資産の評価方法についての明確な定めがないため、評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)に基づき、通達に定める評価方法に準じて評価します。
暗号資産の評価方法
| ケース | 評価方法 |
|---|---|
| 活発な市場が存在する暗号資産 | 相続人等が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期(死亡日)における取引価格で評価 |
| 活発な市場が存在しない暗号資産 | 客観的な交換価値を示す相場がないため、その内容・性質・取引実態等を勘案し個別に評価 |
「活発な市場が存在する」とは、暗号資産取引所・販売所において十分な数量・頻度で取引が行われ、継続的に価格情報が提供されている場合をいいます。 主要な取引所で取り扱われているビットコインなどは、原則としてこの評価方法が適用されます。
暗号資産交換業者は、納税義務者(相続人等)の求めに応じて、被相続人の死亡日時点の残高と取引価格を記載した残高証明書を発行してくれます。 相続税の申告にはこの残高証明書が必要になるため、被相続人が利用していた取引所を特定したら早めに発行を依頼します。
取引所(暗号資産交換業者)にアカウントを持っているケースは、本人確認書類による相続手続きで資産の承継が可能です。 一方、個人のウォレット(ハードウェアウォレットやソフトウェアウォレットなど)で暗号資産を自己管理していた場合、その秘密鍵やリカバリーフレーズが分からないと、技術的に誰もその資産にアクセスできなくなります。
相続人が死因贈与・相続・包括遺贈または相続人に対する特定遺贈により暗号資産を取得した場合の取得価額は、被相続人の死亡時に、その被相続人が暗号資産について選択していた評価方法により評価した金額(死亡時点の評価額)とされています。
相続で取得した暗号資産を後で売却して利益が生じた場合、その利益は雑所得として所得税の課税対象になります。相続税を納めた上で、売却時にさらに所得税がかかる可能性がある点は事前に理解しておく必要があります。 雑所得は総合課税の対象であり、他の所得と合算して所得税率(最大45%)と住民税(10%)が適用されるため、株式の譲渡益(原則約20%の分離課税)と比べて税負担が大きくなりやすい点も押さえておく必要があります。
財産調査の全体的な進め方については「相続財産の調査方法と財産目録の作り方」も参考にしてください。
近年はNFT(非代替性トークン)や、日本国内の取引所を経由せず海外の取引所・DEX(分散型取引所)を利用して暗号資産を保有しているケースも増えています。
確認しておきたい暗号資産関連の財産
| 種類 | 確認のポイント |
|---|---|
| 国内取引所のアカウント | 本人確認済みであれば残高証明書の発行を依頼できる |
| 海外取引所のアカウント | 日本語対応がない場合が多く、相続手続きに時間がかかりやすい |
| NFT(デジタルアート等) | 活発な市場がなければ個別評価。取引実績のあるマーケットプレイスの履歴を確認 |
| ステーキング中の暗号資産 | ロックアップ中でも死亡日時点の評価額で相続税の対象になる |
海外取引所を利用していた場合、相続手続きの窓口が日本語対応でないことが多く、対応に時間がかかる傾向があります。生前に主要な利用サービスだけでも家族に伝えておくことが、遺族の負担を大きく減らすことにつながります。
Q. 被相続人のパスワードや秘密鍵が分からない場合、暗号資産はどうなりますか?
A. パスワードや秘密鍵が分からず暗号資産に一切アクセスできない場合でも、暗号資産交換業者を利用していたのであれば、業者に相続の事実を連絡し、必要書類(死亡診断書・戸籍謄本・相続人であることを証明する書類など)を提出することでアカウントの凍結解除や口座の承継手続きができる場合があります。一方、個人のウォレットで管理していて秘密鍵が完全に失われている場合は、技術的に資産へのアクセスが不可能になり、実質的に相続できなくなる可能性があります。生前にパスワード管理方法を家族と共有しておくことが重要です。
Q. 暗号資産の相続税評価額は、いつの時点の価格を使いますか?
A. 課税時期、つまり被相続人が死亡した日の取引価格を使います。暗号資産は価格変動が非常に大きいため、死亡日の前後で評価額が大きく変わることがあります。取引所の残高証明書には、死亡日時点の残高と、その日の取引価格(レート)が記載されるのが一般的です。相続税の申告書を作成する際は、必ず被相続人の死亡日を課税時期として指定し、残高証明書を取得する必要があります。取引所によっては証明書の発行に数週間かかる場合もあるため、早めに依頼しておくとよいでしょう。
Q. 暗号資産を相続で取得した後、売却したときの税金はどうなりますか?
A. 相続で取得した暗号資産を売却して利益が出た場合、その利益は原則として売却した人(相続人)の雑所得として所得税の課税対象になります。取得価額は、被相続人が死亡した時点でその被相続人が選択していた評価方法により評価した金額(死亡時点の評価額)を引き継ぎます。相続税を支払った上に、売却時にも所得税がかかる可能性がある点は事前に理解しておく必要があります。
暗号資産は制度・実務ともに変化が速い分野です。相続手続きや評価方法について不明な点がある場合は、国税庁の最新FAQを確認するか、暗号資産の相続実績がある税理士に相談することをおすすめします。生前の準備が最も効果的な対策であることも、あらためて意識しておきたいポイントです。
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