相続税対策として有効な「生前贈与」ですが、贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。 2024年の税制改正で両制度に大きな変更がありました。 この記事では、各制度の仕組み・改正のポイント・特例・どちらを選ぶべきかの判断基準を解説します。
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)に受け取った贈与の合計額が 110万円以下であれば贈与税がかからない仕組みです。 この110万円の非課税枠を「基礎控除」といいます。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
受贈者(もらう側)一人につき年110万円まで非課税であるため、 たとえば子2人・孫2人の計4人に毎年110万円ずつ贈与すれば、 年間440万円を非課税で渡すことができます。
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与を対象に、 累計2,500万円までの贈与を贈与税ゼロで行える制度です。 ただし「精算課税」という名称のとおり、相続発生時に贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。
相続時精算課税の基本的な仕組み
| 対象者 | 贈与者:60歳以上の父母・祖父母 / 受贈者:18歳以上の子・孫 |
| 非課税枠 | 累計2,500万円(超えた部分は一律20%課税) |
| 相続時の扱い | 贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算(持ち戻し) |
| 贈与税申告 | 選択届出書の提出が必要(一度選択すると暦年課税に戻れない) |
2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税制度にも年110万円の基礎控除が新設されました。 この改正により、相続時精算課税の使い勝手が大幅に向上しました。
相続時精算課税の改正比較
| 項目 | 改正前(〜2023年) | 改正後(2024年〜) |
|---|---|---|
| 年間基礎控除 | なし | 110万円/年 |
| 持ち戻しの範囲 | すべての贈与財産 | 年110万円超の部分のみ |
| 実質的な節税効果 | 相続税との差額のみ | 年110万円分は完全に相続財産から除外 |
直系尊属(祖父母・親)から子・孫への教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与には特別な非課税枠があります。
父母・祖父母など直系尊属から住宅取得資金を贈与される場合、一定額まで贈与税が非課税になります。 非課税限度額は住宅の種類(省エネ等住宅か否か)によって異なります。
この特例は年110万円の基礎控除と併用できるため、基礎控除と合算した金額まで 贈与税ゼロで受け取ることができます。 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅に居住することが要件の一つです。
暦年課税 vs 相続時精算課税の選び方
| 状況 | 向いている制度 |
|---|---|
| 長期間にわたって少額を贈与したい | 暦年課税 |
| 将来値上がりが期待できる財産を早期に渡したい | 相続時精算課税 |
| 相続まで時間が少ない(7年以内に相続が予想される) | 相続時精算課税 |
| 相続財産が基礎控除内に収まる見込み | どちらでも(贈与不要の可能性も) |
| 将来値下がりが予想される財産 | 暦年課税(精算課税は贈与時の評価で課税) |
相続時精算課税は一度選択すると同じ贈与者・受贈者の組み合わせでは暦年課税に戻れません。 どちらを選ぶかは、被相続人の年齢・財産の種類・相続人の状況などを総合的に判断する必要があります。 迷う場合は税理士への相談をお勧めします。
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