相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」です
節税対策 2026年5月5日 読了 約7分

養子縁組を使った相続税対策のメリット・デメリットと法的な注意点

養子縁組は「法定相続人の数を増やして基礎控除や生命保険の非課税枠を拡大する」節税対策として知られています。 しかし相続税法上の制限・孫養子縁組のリスク・家族間のトラブルを引き起こす可能性など、 注意すべき点も多くあります。この記事でメリット・デメリットを整理します。

1. 養子縁組で相続税が下がる仕組み

相続税の基礎控除は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数」で計算されます。 養子縁組によって法定相続人の数が増えると、基礎控除額が増え課税遺産総額が減ります。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。

基礎控除への影響

法定相続人が3人から4人に増えた場合、基礎控除額は4,800万円から5,400万円に600万円増えます。 遺産総額によっては、この600万円の差が適用される税率(10〜30%)に応じて60〜180万円の節税になります。

生命保険の非課税枠への影響

生命保険の死亡保険金の非課税枠は「500万円 × 法定相続人数」です。 法定相続人が1人増えると、非課税枠が500万円増加します。

計算例:法定相続人が子2人から子2人+養子1人に増えた場合 →基礎控除600万円増加・生命保険非課税枠500万円増加 = 合計1,100万円分の課税対象財産を圧縮できる可能性があります。

2. 普通養子縁組と特別養子縁組の違い

普通養子縁組と特別養子縁組の比較

項目普通養子縁組特別養子縁組
実親との関係継続する原則断絶する
手続き届出(協議による)家庭裁判所の審判が必要
対象年齢原則養親より年下原則15歳未満
相続税対策での活用一般的に使われる通常使われない
実親からの相続両方の親から相続できる養親からのみ

相続税対策として活用されるのは主に普通養子縁組です。 特別養子縁組は子どもの福祉を目的とした制度であり、節税目的での利用はなじみません。

3. 孫養子縁組(相続税1.5倍課税のリスク)

孫を養子にする「孫養子縁組」は、一世代を飛ばして財産を移転できるため 相続税の支払い回数を減らせるメリットがあります。

しかし孫養子(代襲相続人である孫を除く)は「相続税額の2割加算」の対象になります。 孫養子が相続した場合、通常計算した相続税額に20%上乗せされた税額を納付しなければなりません。

2割加算の影響:たとえば孫養子が算出した相続税が100万円なら、 2割加算後は120万円の納税が必要になります。 一世代飛ばしによる節税メリットがこの加算税で相殺されることもあるため、 慎重に試算することが必要です。

4. 相続税法上の養子の制限

民法上は養子の数に制限はありませんが、 相続税法では基礎控除等の計算で法定相続人に含められる養子の数に上限があります。

なお以下に該当する養子は、この人数制限の例外として全員カウントされます。

5. 養子縁組が問題になるケース(争族の原因)

養子縁組は法的には正当な手続きですが、他の相続人から「財産目当てでは」と疑われるなど 家族間の不和を招くことがあります。

「争族」を避けるために:養子縁組を検討する場合は、 家族全員に事前に説明し理解を得ることが重要です。 遺言書の付言事項に縁組の理由を記載することも有効です。

6. 税務署に否認されるリスク

最高裁判所の判例(2017年)で、租税回避を目的とした養子縁組でも 縁組の意思があれば有効であるとの判断が示されました。 しかし実態のない形式的な縁組は民法上の「縁組の意思の欠如」として無効と判断される可能性があります。

また税務署は、節税対策として明らかに行われた縁組であっても 法定相続人としてのカウントを否定することは難しいとされています。 ただし縁組後すぐに被相続人が亡くなった場合や、縁組の実態(同居・扶養関係など)が全くない場合は 争いになる可能性があります。

導入前に専門家へ相談を:養子縁組による相続税対策は効果がある一方で、 法的・税務的・家族関係的な複合リスクがあります。 必ず相続専門の税理士・弁護士に相談してから判断することを強くお勧めします。

参考・出典

養子縁組の効果を試算する前に、現状の相続税概算を確認しましょう

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