相続税の申告期限は「死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内」です
節税対策 2026年5月5日 読了 約9分

不動産を生前に売るか死後に売るか?税金を比較して判断する方法

親が高齢になると「実家をいつ売るか」という問題が浮上します。 生前に親本人が売るのか、亡くなった後に相続してから売るのかによって、 かかる税金の種類・計算方法・使える特例が大きく変わります。 どちらが有利かはケースによって異なるため、仕組みを理解したうえで比較検討しましょう。

1. 生前売却の税金(譲渡所得税)

親が生きているうちに不動産を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかります。 譲渡所得税は所得税・住民税・復興特別所得税を合計した税率で計算します。 路線価は国税庁が毎年7月に公表しており、公示価格の約80%水準で設定されています。

譲渡所得税の計算式:
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
税額 = 譲渡所得 × 税率(長期:20.315% / 短期:39.63%)

「取得費」は購入時の価格(購入費用・仲介手数料・登記費用なども含む)です。 取得費が不明な場合は売却価格の5%を取得費として計算できます(概算取得費)。

概算取得費(5%ルール)の注意: 実際の購入価格が売却価格の5%未満の場合にしか使えません。 昔の領収書や売買契約書は捨てずに保管しておきましょう。

2. 死後売却(相続後売却)の税金

不動産を相続してから売却する場合、相続税と譲渡所得税の2種類の税金が関係します。 相続税は相続時の評価額(路線価などで算出)に対してかかり、 譲渡所得税は相続後に売却した際の売却益に対してかかります。

相続後の取得費はいくらになるか

相続で取得した不動産の「取得費」は、原則として被相続人(亡くなった親)が 実際に購入したときの金額を引き継ぎます。 親が30年前に購入した不動産でも、購入時の価格が取得費となります。

取得費の引継ぎ: 相続で取得した場合、取得費は被相続人の購入価格を引き継ぎます。 購入価格が低ければ、売却益が大きくなり譲渡所得税が増える点に注意が必要です。

3. 取得費加算の特例

相続後に不動産を売却した場合、一定の条件を満たせば 「支払った相続税の一部を取得費に加算できる」特例が使えます。 これにより譲渡所得が減少し、譲渡所得税の負担が軽くなります。

適用条件(3つすべてを満たすこと):
  • 相続・遺贈で取得した財産を売却する
  • 相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却する
  • 相続税が発生している(非課税の場合は適用不可)

加算できる取得費の金額は、支払った相続税額のうち売却した不動産に対応する割合の金額です。 「3年以内」という期限があるため、売却時期の計画が重要になります。

4. 3,000万円特別控除の使い分け

居住用不動産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。 生前売却と死後売却では、この特例の適用条件が異なります。

3,000万円特別控除の適用条件の違い

売却パターン適用できる特例主な条件
生前売却(親本人が売る)居住用財産の3,000万円控除親が実際に住んでいた(転居後3年以内)
死後売却(相続後に子が売る) 空き家特例の3,000万円控除 1981年以前築・区分所有でない・相続後も誰も住んでいない・耐震リフォームか解体が必要・2027年12月末まで
空き家特例の注意点: 建物が1981年(昭和56年)5月31日以前に建築されたことが条件です。 また、売却価格が1億円以下、相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円に縮小されます(2024年以降の譲渡)。

5. 長期・短期の判定と税率

譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が「5年超」かどうかで大きく異なります。

所有期間と税率

所有期間区分税率(所得税+住民税+復興特別所得税)
5年以下短期譲渡所得39.63%
5年超長期譲渡所得20.315%
10年超(居住用)軽減税率の特例6,000万円以下の部分は14.21%

相続で取得した不動産の所有期間は「被相続人が取得した日」から起算します。 親が30年前に購入した不動産を相続した場合、相続直後に売却しても長期譲渡所得(20.315%)の税率が適用されます。

6. ケース別シミュレーション比較

条件:親が30年前に2,000万円で購入した戸建て(1981年以前築)を5,000万円で売却する場合

生前売却 vs 相続後売却の税負担比較(概算)

項目生前売却(親が売る)相続後売却(子が売る)
売却価格5,000万円5,000万円
取得費2,000万円2,000万円(引継ぎ)
譲渡所得3,000万円3,000万円
3,000万円控除▲3,000万円(親の居住用)▲3,000万円(空き家特例・条件次第)
課税譲渡所得0円0円(特例適用時)
譲渡所得税0円0円(特例適用時)
相続税相続財産が現金5,000万円に変わる(評価は同額)不動産として相続(路線価評価で圧縮される可能性)
判断のポイント: どちらが有利かは「不動産の相続税評価額と売却価格の差」「空き家特例の適用可否」 「相続税の税率」などによって変わります。 単純にどちらが得かは一概に言えないため、相続税・譲渡所得税の両方を試算して比較することが重要です。

参考・出典

不動産を含む相続税の概算を計算して、売却判断の参考にしましょう

相続税を無料で計算する →

相続税計算機 運営事務局

本サイトは個人が運営する情報提供サイトです。相続税申告・遺産分割・生前対策について、国税庁・法務省・裁判所などの公開情報をもとに記事を編集・公開しています。お問い合わせは お問い合わせフォーム よりお願いします。