親が高齢になると「実家をいつ売るか」という問題が浮上します。 生前に親本人が売るのか、亡くなった後に相続してから売るのかによって、 かかる税金の種類・計算方法・使える特例が大きく変わります。 どちらが有利かはケースによって異なるため、仕組みを理解したうえで比較検討しましょう。
親が生きているうちに不動産を売却した場合、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税がかかります。 譲渡所得税は所得税・住民税・復興特別所得税を合計した税率で計算します。 路線価は国税庁が毎年7月に公表しており、公示価格の約80%水準で設定されています。
「取得費」は購入時の価格(購入費用・仲介手数料・登記費用なども含む)です。 取得費が不明な場合は売却価格の5%を取得費として計算できます(概算取得費)。
不動産を相続してから売却する場合、相続税と譲渡所得税の2種類の税金が関係します。 相続税は相続時の評価額(路線価などで算出)に対してかかり、 譲渡所得税は相続後に売却した際の売却益に対してかかります。
相続で取得した不動産の「取得費」は、原則として被相続人(亡くなった親)が 実際に購入したときの金額を引き継ぎます。 親が30年前に購入した不動産でも、購入時の価格が取得費となります。
相続後に不動産を売却した場合、一定の条件を満たせば 「支払った相続税の一部を取得費に加算できる」特例が使えます。 これにより譲渡所得が減少し、譲渡所得税の負担が軽くなります。
加算できる取得費の金額は、支払った相続税額のうち売却した不動産に対応する割合の金額です。 「3年以内」という期限があるため、売却時期の計画が重要になります。
居住用不動産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。 生前売却と死後売却では、この特例の適用条件が異なります。
3,000万円特別控除の適用条件の違い
| 売却パターン | 適用できる特例 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 生前売却(親本人が売る) | 居住用財産の3,000万円控除 | 親が実際に住んでいた(転居後3年以内) |
| 死後売却(相続後に子が売る) | 空き家特例の3,000万円控除 | 1981年以前築・区分所有でない・相続後も誰も住んでいない・耐震リフォームか解体が必要・2027年12月末まで |
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が「5年超」かどうかで大きく異なります。
所有期間と税率
| 所有期間 | 区分 | 税率(所得税+住民税+復興特別所得税) |
|---|---|---|
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
| 10年超(居住用) | 軽減税率の特例 | 6,000万円以下の部分は14.21% |
相続で取得した不動産の所有期間は「被相続人が取得した日」から起算します。 親が30年前に購入した不動産を相続した場合、相続直後に売却しても長期譲渡所得(20.315%)の税率が適用されます。
条件:親が30年前に2,000万円で購入した戸建て(1981年以前築)を5,000万円で売却する場合
生前売却 vs 相続後売却の税負担比較(概算)
| 項目 | 生前売却(親が売る) | 相続後売却(子が売る) |
|---|---|---|
| 売却価格 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 取得費 | 2,000万円 | 2,000万円(引継ぎ) |
| 譲渡所得 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 3,000万円控除 | ▲3,000万円(親の居住用) | ▲3,000万円(空き家特例・条件次第) |
| 課税譲渡所得 | 0円 | 0円(特例適用時) |
| 譲渡所得税 | 0円 | 0円(特例適用時) |
| 相続税 | 相続財産が現金5,000万円に変わる(評価は同額) | 不動産として相続(路線価評価で圧縮される可能性) |
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