2020年4月に施行された改正民法で「配偶者居住権」が新設されました。 これにより、亡くなった配偶者の自宅を相続人全員で共有せずに、 配偶者が終身にわたって住み続けながら、所有権は子に渡すという形が可能になりました。 この記事では、配偶者居住権の仕組み・設定方法・税務上の扱いを解説します。
配偶者居住権とは、被相続人(亡くなった方)の配偶者が、 相続開始時に被相続人が所有していた建物に、終身または一定期間にわたって 無償で居住できる権利です。 国税庁の統計によると、2022年に相続税の申告があった被相続人は約15万人で、課税された割合は死亡者全体の約9.6%です。
この権利により、自宅の所有権を子が取得しつつも、配偶者は引き続き自宅に住み続けることができます。 配偶者は「居住権」という財産的価値のある権利を相続財産として取得し、 子は「負担付きの所有権」(居住権という負担がある)を取得します。
改正前の相続では、配偶者が自宅の所有権を取得すると、その評価額が相続分の大部分を占め、 生活に必要な預貯金など他の財産をほとんど取得できないケースがありました。
例えば遺産が自宅4,000万円と預貯金2,000万円(合計6,000万円)の場合、 配偶者の法定相続分は1/2(3,000万円)ですが、自宅を取得すると預貯金はほとんど取れません。 住む場所は確保できても日々の生活費に困る問題が生じていました。
配偶者居住権を使えば、自宅を「居住権(例:2,000万円)」と「負担付き所有権(例:2,000万円)」に分割できるため、 配偶者は居住権2,000万円+預貯金1,000万円を取得し、子は負担付き所有権2,000万円を取得するという バランスのよい分割が可能になります。
所有権と配偶者居住権の比較
| 項目 | 所有権 | 配偶者居住権 |
|---|---|---|
| 売却 | 可能 | 不可(居住権のみの売却は不可) |
| 賃貸(第三者に貸す) | 可能 | 所有者の同意があれば可能 |
| 期間 | 永続 | 終身または遺産分割で定めた期間 |
| 登記 | 所有権登記 | 配偶者居住権の登記が必要 |
| 相続・贈与 | 可能 | 不可(一身専属の権利) |
配偶者居住権は配偶者本人だけが持てる権利で、子や他の人に相続・贈与することはできません。 配偶者が亡くなると自動的に消滅し、所有者である子が完全な所有権を取得します。
配偶者居住権を設定するためには、次のいずれかが必要です。
設定後は、配偶者居住権の登記を行うことが必要です(登記しなければ第三者に対抗できません)。 登記費用は別途発生します。
配偶者居住権が設定された場合、建物と土地の評価額は「配偶者居住権等の価額」と 「居住建物等の所有権の価額」に分けて評価します。
配偶者居住権の評価は、配偶者の平均余命・居住権の存続期間・法定利率を用いた 複利現価の計算式で算出されます。計算が複雑であるため、 実際には税理士に依頼するのが一般的です。
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